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アムステルダム旧教会のオルガンを聴く

2009年08月08日

「THE AHREND & BRUNZEMA ORGAN OF THE AMSTERDAM'S OUDE KERK 1964 - 2004(アムステルダム旧教会のオルガン)」(レオンハルト・インブルーノ、TACTUS、TC570001)

グスタフ・レオンハルトのお膝元であるオランダには、数多くのオルガンが現存する。様々な街には教会があり、そこにオルガンが設置されている。そうした教会オルガンは、建設以来、修復されたり、パイプの本数を増やしていくなどの改良も加えられた。
オランダで見られるオルガンは、

・ブラバンド型(ニーホフ型);オルガン部分が上下二段に分離されているもの
・ドイツ型(シェラー型);ブラバンド型の両側に足鍵盤のパイプを集めた塔型の部分を持つもの
・北ドイツ型;ドイツ型をさらに改良したもの

などが見られる(『遥かなるオルガンの響き オランダ教会オルガンとバッハ街道の旅』(田中 強、牧歌舎))。

今回紹介するCDは、アムステルダムにある「旧教会」のオルガンを用いて、北ドイツ楽派のオルガン音楽を演奏したものである。

この教会は、ユトレヒトの大司教が、船乗りの加護のために建設したもので、アムステルダムで最も古い教会であり、アムステルダム最初のハイ・ルネッサンス様式の教会として知られている。画家のレンブラントが結婚式をし、また同じ画家であるフェルメールも眠っている。アムステルダムの船乗りの守護聖人である聖ニコラウスが祭られていることでも有名である。

最初のオルガンは、ニーホフによって作成されたが、現存していない。現在残っているのは、その後の1724年ファーターによって造られたものを、ミュラーが修復したものである。送風器8つ、金箔張りのパイプが50本ついている。

収録曲は以下の通りで、シャイデマン、ヤン・ピーテルスゾーン・スヴェーリング、アントニ・ファン・ノールトらの曲からなっている。アントニ・ファン・ノールトは、1664年に新教会のオルガン奏者に任じられたが、その兄であるヤコブ・ファン・ノールトは、旧教会のオルガン奏者であった。

1) 神のひとりなる子主キリスト(ハインリヒ・シャイデマン)
2) 詩篇第50番(アントニ・ファン・ノールト)
3) トッカータ ト長調(ハインリヒ・シャイデマン)
4) トッカータ ハ長調(ヤン・ピーテルスゾーン・スヴェーリング)
5) 大公のバッロ(ヤン・ピーテルスゾーン・スヴェーリング)
6) エコー・ファンタジア イ短調(ヤン・ピーテルスゾーン・スヴェーリング)
7) 《ダフネ》による3つの変奏曲(作曲者不詳、17世紀オランダ)
8) ベルガマスカ(ザムエル・シャイト)
9) 詩篇第23番による3つの変奏曲(作曲者不詳、17世紀オランダ)
10) 主よあわれみ給え(ハインリヒ・シャイデマン)
11) よい羊飼いはよみがえられた(ハインリヒ・シャイデマン)

1〜3がグスタフ・レオンハルト、残りがマテオ・インブルーノによる演奏で、レオンハルトの演奏の録音年月日はわからない。インブルーノは2004年9月7−9日に録音したものである。
音律はミーントーンである。

選曲、演奏ともに抜群に優れている。レオンハルトのオルガン演奏は見事という他に言いようがないものである。
実際のところ、教会での演奏を聴きたいと思わせる内容となっている。やはり、オルガンはCDによるステレオでは音の再現が困難であり(お金を投資すればそれなりになんとかなるが、恐らくオルガンは一番再現が困難な楽器の一つと思われる)、オルガン自体が建物と一体になった一つの楽器であることを考えれば、その場で聴くことが一番素晴らしい音を耳にすることができると思われる。

なおこの記事は、『遥かなるオルガンの響き オランダ教会オルガンとバッハ街道の旅』(田中 強、牧歌舎)を参考に書いたものであるが、薄い本ながらオルガンの魅力を伝えてくれる一冊である。写真が豊富であり、オルガンが楽器としてだけでなく、一つの見事な美術品であることを教えてくれる

教会音楽に神様による「教皇マルチェルスのミサ」

2009年07月30日

「パレストリーナ:教皇マルチェルスのミサ」(デイヴィッド・ヒル指揮、ウェストミンスター大聖堂聖歌隊、hyperion、CDA66266)
録音;1987年5月4−6日、ウェストミンスター大聖堂

このところご無沙汰になっているが、「「古楽CD100ガイド」(国書刊行社)」で紹介されている曲を順番に聴いていく企画を久しぶりにやってみたいと思う。実は、今日紹介するのは、先月、タリス・スコラーズのコンサートに行った際に歌われた1曲である。

ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ(1525年頃〜1594年)は、ルネサンス時代の教会音楽において傑出した作曲家であった。ある意味神格化されているとも言える。ローマの有力な教会で楽職を歴任しており、当時も後世においても教会音楽のトップに君臨する存在である。フランドル楽派によって生み出され、発展させたポリフォニー書法を完全なまでに自分のものとし、彼独自の音楽様式を発展させた。

膨大な数を作曲しているが、その中でも今回紹介する「教皇マルチェルスのミサ」は、彼が作曲した曲の中でも屈指の名曲であろう。この曲については、ある伝説があるとされている。

ポリフォニーによる典礼音楽は歌詞すなわち典礼文が明瞭に聴き取れなくなるからこれを禁止しよう、という教会権力側(トレント公会議)の圧力に対し、《教皇マルチェルスのミサ》を作曲することでポリフォニーと歌詞の伝達が両立し得ることを示し、ポリフォニー音楽の危機を救った
「古楽CD100ガイド」(国書刊行社)

というエピソードが残っているだ。実際のところは、これは「伝説」であって、教皇マルチェルスとトレント公会議とこの曲には直接な関係はなかったとされている。ただし公会議がポリフォニー典礼を容認した後に、教皇や公会議の方針にしたがって作曲されたことは間違いないと「古楽CD100ガイド」(国書刊行社)では指摘している。

こうした音楽史に残る有名な伝説が残るほど、この曲は見事である。人間の歌声がいかに優れた楽器であるかを実感できる。以前に「デュファイの定旋律ミサ「ミサ・ロム・アルメ」」で紹介した定旋律ミサではないのだが、曲の一部に「ロム・アルメ」によく似たフレーズが出てくる。またポリフォニー要素が少ない部分(グローリア、クレド)もあり、「古楽CD100ガイド」(国書刊行社)が指摘しているように、「言葉を聴き取りやすくする」ためのパレストリーナの工夫が見られる。

有名な曲なので、録音は多いが、ここでは中でも優れている2枚を紹介する。一枚は今回聴いたデイヴィッド・ヒルが指揮するウェストミンスター大聖堂聖歌隊によるhyperion盤である。もちろんソプラノは少年合唱である。大聖堂での録音であるため、その響きの素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。

そしてもう一枚は、冒頭で述べたタリス・スコラーズによる名盤である。

「アレグリ ミゼレーレ」(タリス・スコラーズ、Gimell、GIMSE401)

こちらは、ソプラノは女性が担当しているが、まさに名盤、名唱である。先日のコンサートでも聴いたが、背筋がぞっとするほどの「完璧」なハーモニーを堪能できる。

いずれも名盤であるが、タリス・スコラーズ盤は比較的入手しやすいと思う。

なお、ウェストミンスター大聖堂聖歌隊盤は、教皇マルチェルスのミサとともに、「ミサ・ブレヴィス」が収録されている

デュフリのクラブサン曲を聴く

2009年06月20日

「DUPHLY : Complete Works for Harpsichord」(John Paul、Lyrichord、LEMS 8053)

優れた演奏家の卓越した演奏を耳にして、あまり知られていない作曲家を知る醍醐味が、コンサートに足を運ぶことにあると思う時がある。先月、ジャック・デュフリという作曲家の素晴らしさを知った方が多かったのではないか?と思う。それは先日「グスタフ・レオンハルト チェンバロ・リサイタル」に足を運んだ方のことを言っているのである。確かに、あのコンサートの後、デュフリのCDを紹介しているブログ記事をよく目にした気がする。今日はそのデュフリのクラブサン曲集を紹介したいと思う。

ジャック・デュフリ(Jacques Duphly)は、 1715年1月12日にフランス、ルーアンに生まれた。フランソワ・ダジャンクールの弟子であり、オルガニストとしてスタートを切ったようである。オルガニストとして様々なポジションに就いた後、1742年にパリにチェンバリストとして赴いた。1789年7月15日に亡くなるまでパリに留まった。彼は公けに何かのポジションに就いたわけではなく、一演奏家として活躍し、優れたクラヴサン奏者の教師でもあった。

その彼は、4つのクラブサン曲集を残している。

第1巻(Premier Livre)は、1744年に刊行された。

PremierLivreBook1.gif

全15曲から成っており、アルマンドやクーラントといった伝統的な舞曲から構成されている。
1. Allemande
2. Courante
3. La Vanlo
4. Rondeau
5. La Tribolet
6. Rondeau
7. La Damanzy
8. La Cazamajor
9. Allemande
10. La Boucon
11. La Larare
12. Menuets
13. Rondeaux
14. La Millettina
15. Legerement

第2巻(Second Livre)は、1748年に刊行された。

PremierLivreBook2.gif

全14曲から成っており、4つの調性別グループに分けられている。
1. La Victoire
2. La de Villeroy
3. La Felix
4. La de Vatre
5. La Lanza
6. Les Colombes
7. La Damanzy
8. La de Beuzeville
9. La D'Hericourt
10. Gavottes
11. Menuets
12. La de Redemond
13. La de Caze
14. La de Brissac

第3巻(Troisième Livre)は、1758年に刊行。

PremierLivreBook3.gif

この第3巻では、5つのの調性グループに分けられており、全11曲から成っている。
1. La Forqueray
2. Chaconne
3. Medee
4. Les Graces
5. La de Belhombre
6. Menuets
7. La de la Tour
8. La de Guyon
9. Menuets
10. La de Chamlay
11. La de Villeneuve

第4巻(Quatrième Livre)は、1768年に刊行されている。

PremierLivreBook4.gif

全6曲から成っているが、上述の2巻とは異なり、何かのグループに分類されているわけではない。

1. La de Juigne
2. La de Sartine
3. La de Drummond
4. La de Vaucanson
5. La Pothouin
6. La de Buq

このデュフリのクラブサン曲であるが、実に繊細で華麗である。豊かなな和音も魅力的である。「色彩豊かな音楽」と言える。上に記したように、各巻によってその曲の性格が様々であり、ある意味クラブサンの様々な側面を楽しむことができると思う。聴きやすいという側面もあろう。ここにフランス・バロックに代表される宮廷を意識させる面を見いだせない。これは、デュフリが公職に就かなかったことによるところもあるだろうし、時代がバロックの終焉の中にあったこともその理由の一つと考えられる。クラブサンが終焉を向かえ、フォルテピアノが出てきた時期とも一致する。デュフリの頭には、クラブサンだけでなく、フォルテピアノも想定されたかもしれない。

レオンハルトによれば、「天才ではないが美しい音楽」であるという。確かに「美しい」。それがこの孤高の天才がコンサートで魅せてくれた音楽であった。

このデュフリの全ての楽譜が、ここで見ることができる。pdfファイルとなっている。フランス語で書かれているので、そのHPで記載されていることが理解できないが・・・

今回紹介したCDは、このデュフリの全4巻の全曲を録音したものである。演奏はジョン・ポール。アメリカのAnden Houbenの2段チェンバロ(2000年、Antoine Vaudryの1691年製のコピー)を使用している。ピッチはa' = 392 Hzで、音律はキルンベルガーIIIを用いている。

今回はデュフリの全曲を紹介するために、全集を録音したCDを紹介したが、最後にやはりレオンハルトによる名演を紹介して終わりたい。

「デュフリ/フォルクレ : クラヴサン曲集」(グスタフ・レオンハルト、SEON、SRCR 2435-6)

こちらは2枚組で、1枚目がデュフリ、2枚目がフォルクレとなっており、デュフリの作品は11曲収録されている。

また、

「フランス・クラヴサン音楽の精華」(グスタフ・レオンハルト、DHM、BVCD-38194)

にも収録されている。

全集は入手しにくい(アメリカのアマゾンにたまたま在庫があったので取り寄せた)が、レオンハルトの名演は幸いまだ入手可能である。コンサートでの感動を味わい方は、是非聴いてみて頂きたい

テレフンケン・トレジャーズ

2009年06月12日

テレフンケン(後のテルデック)が2003年に創立75年周年を迎えるのを記念して、2002年の終わりに「テレフンケン・トレジャーズ」として、過去の名盤をリマスターした発売していたことがあった。日本の独自企画として、ワーナークラシックが企画したものである。

その残りをたまに店頭で見かけることがあったが、今回再プレスとなって、50枚が再発となった。発売になるのは、以下の50タイトルである。

ブリュッヘン 涙のパヴァーヌ〜オリジナル楽器によるブロックフレーテ曲集1
ブリュッヘン 恋のうぐいす〜オリジナル楽器によるブロックフレーテ曲集2
ブリュッヘン イギリスのナイチンゲール〜オリジナル楽器によるブロックフレーテ曲集3
ブリュッヘン ラ・フォリア〜オリジナル楽器によるブロックフレーテ曲集4
リヒター バッハ:ブランデンブルク協奏曲[全曲]
アーノンクール バッハ:管弦楽組曲[全曲]
ニコレ バッハ:フルート・ソナタ集
アーノンクール バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ集他
リヒター バッハ:オルガン作品集
リヒター バッハ:ゴルトベルク変奏曲
リヒター バッハ:パルティータ[全曲]
レオンハルト バッハ:半音階的幻想曲とフーガ〜チェンバロ作品集
タヘツィ バッハ:フーガの技法
アーノンクール バッハ:農民カンタータ&コーヒー・カンタータ
ブリュッヘン テレマン:ターフェルムジーク(食卓の音楽)第1集
ブリュッヘン テレマン:ターフェルムジーク(食卓の音楽)第2集
ブリュッヘン テレマン:ターフェルムジーク(食卓の音楽)第3集
ブリュッヘン テレマン:ブロックフレーテ・ソナタ
ブリュッヘン テレマン, サンマルティーニ 他:ブロックフレーテ協奏曲集
バウマン ヘンデル, テレマン:ホルンとオルガンのための作品集
ビルスマ ボッケリーニ, ハイドン, フンメル:協奏曲集
ビルスマ イタリア・バロックのチェロ名曲集
アラリウス・アンサンブル 17世紀イタリアのヴァイオリン名曲集
ルーラント マショー:ノートル・ダム・ミサ曲, モテトゥス集
ユルゲンス シュッツ:十字架上の7つの言葉、ルカ受難曲
リヒター モーツァルト:レクイエム
リヒター モーツァルト:交響曲第29番他
ニコレ モーツァルト:フルート協奏曲, フルート&ハープ協奏曲 他
バウマン モーツァルト:ホルン協奏曲集
ハーガー モーツァルト:ファゴット, オーボエ, クラリネット協奏曲
マイゼン モーツァルト:フルート四重奏曲[全曲]
ニコレ モーツァルト:フルート四重奏曲第1番, オーボエ四重奏曲 他
タヘツィ モーツァルト:オルガン作品全集 他
ギーベル モーツァルト:エクスルターテ・イウビラーテ 他
トビアス・ライザー・アンサンブル モーツァルトと民衆音楽第1集
コンソルティウム・クラシクム べートーヴェン:舞曲集
コンソルティウム・クラシクム ウィーンのセレナード集
ベルリン・ブランディス弦楽四重奏団 シューベルト:弦楽五重奏曲
バイロイト音楽祭室内合奏団 シューベルト:ピアノ五重奏曲《ます》
プライ シューベルト:歌曲集《美しい水車小屋の娘》
テレベシ パガニーニ:ヴァイオリンとギターの音楽第1集
ノイマン ドヴォルザーク:スラヴ舞曲集, スラヴ狂詩曲
ノイマン スメタナ:交響詩《わが祖国》[全曲] 他
ノイマン フチーク:管弦楽作品集
ウィーン・ハイドン・トリオ ドヴォルザーク, スメタナ:ピアノ三重奏曲
ドミンゴ ベルカント・ドミンゴ
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団 ドイツ・オペラ合唱曲集
ショルツ リリー・マルレーン〜ドイツ名行進歌集
ベルリン・フィル12人のチェリスト達 イエスタデイ, ブラジル風バッハ 他

オリジナル・マスターから96KHz/24bitテクノロジーを使ってリマスターしたものということだ。再生産後、商品在庫がなくなり次第終了とのことである。

ジャケットはLP時代のものをそのまま使用している。過去にレコードで持っていたものがいくつかあり、懐かしいと思って眺めていた。

残念なことに古楽器を使った演奏ばかりではなく、もはや過去の遺産となった演奏家のものも数多く含まれるため、全てを購入する気分にはなれない。さらに、バロック時代の曲だけというわけではなく、古典派以降の音楽も含まれる。

また、現在では古楽器を使って演奏している演奏家も、モダン楽器を使っていた時代があり、そうした演奏も含まれる。例えば、ブリュッヘン のテレマン:ターフェルムジークなどがそうである。参加しているメンバーは、現在の古楽器による演奏の基礎となった人達ばかりであるが、まだ録音を始めた当初ということで、モダン楽器を使用している。それ以降、古楽器へと移って行くのである。そうしたちょっとした歴史を見てみるのにはいいのかもしれない。

さて、この一連のシリーズの中でのお気に入りを二枚だけ紹介して終わる。

「17世紀イタリアのヴァイオリン名曲集」(アラリウス・アンサンブル、TELDEC、WPCS-22029)

アラリウス・アンサンブルは、ヤニーネ・ルービンリヒト、シギスヴァルト・クイケン(ヴァイオリン)、ヴィーラント・クイケン(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、ロベール・コーネン(オルガン、チェンバロ)の4人から成っている。バロック・ヴァイオリンの美しさを堪能できる一枚である。

「シュッツ:十字架上の7つの言葉、ルカ受難曲 」(ユルゲンス、レオンハルト・コンソート)

このアルバムは、今回紹介しているシリーズから出ているが、わたくしが入手したものは、「DAS ALTE WERK 50 years」のシリーズで出ているもの。これに類似したジャケットのものが「DAS ALTE WERK 50 years」として数枚出ている。上の50枚の中のいくつかも現在この手のジャケットのものとして入手可能である。ただし、定期的に国内に入ってきているようではなく、「気まぐれ」に店頭で見かける。このアルバムも実によい録音である。マックス・ファン・エグモントなどの声楽陣もかなりの凄腕が揃っている。

「DAS ALTE WERK 50 years」のシリーズは、輸入版で、解説もあまり丁寧に書かれていないという難点があるものの、録音、演奏ともに優れたものが多く、特に古楽器で演奏されたものは、録音がかなり古いが、いずれも秀逸なものばかりでお勧めである

琵琶湖の畔に降り立った天使たち〜タリス・スコラーズ

2009年06月06日

このところ精神的にまいることが多く、かなり塞ぎ込んでいるのだが、今日は少しの間その気持ちを忘れさせてくれる時間を与えられた。スーパー・グループ、タリス・スコラーズのコンサートに行ってきた。2年前の今日、タリス・スコラーズのコンサートに行ったのだが、それ以来のこととなる。

滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールの大ホールだった。少し大きすぎないか、と思ったのだが、それも杞憂に終わった。パレストリーナの「立ち上がれ、輝け、イエルサレムよ(第1部)」から始まったが、その第一声を聴いて、やはりぞっとするものを感じた。このグループの素晴らしさは書いても書き尽くせないと思うが、やはりそれを生の歌声で聴くと、その気持ちがより一層増す。前回実際に聴いて感じたのだが、今回も同じ感覚を持った。それは、

彼らは歌っているふりをしているだけ(つまり『口ぱく』)で、実はCDが流れているのではないか・・・

ということだ。それくらい、目の前で歌われていることが現実のものと理解できないくらいに、人間離れしている世界が展開しているのだ。

演奏は、前回と基本的に変わらないやり方だった。

1)曲によって編成を変える
2)曲によって配置を変える
3)曲の始めのチューニングは、アルトのパトリック・クライグが声を出すことで行われる

というものだ。1)については、まあ当たり前と言えば当たり前のことだ。2)については、わたくしが今回聴いた限りでは、

舞台に向かって左から

(1)ソプラノ(2人もしくは4人)ーアルト(2人)ーテノール(2人)ーバス(2人)
(2)ソプラノ(2)ーアルト(1人)ーテノール(1人)ーバス(1人)ーバス(1人)ーテノール(1人)ーアルト(1人)ーソプラノ(2)

というのが基本的な配置のようだ。もちろん、曲によって編成が変わるので、ソプラノ3人とテノール1人という曲もあった。

3)については、アカペラグループらしいチューニング法だ。それにしても、少し声を出し、他のメンバーはそれを聴いただけで、恐ろしいくらいに調和した合唱を始めてしまうのだからびっくりする。どうやらポケットに音叉を入れていて、始まる前に耳でその音を聴いてから声にしているようだ(ある曲の始めにそれに気がついた)。もちろん、アルトが出てこない曲では他の人がチューナーとなる(今回は1曲だけソプラノが担当した)。

さて、今回もアレグリのミゼレーレが演奏されるとあらかじめわかっていたので、「あること」を期待していた。後半の最初の曲目がそうだったのだが、舞台に出てきた人数を見てそれが当たっていることを知って、思わずにんまりした。

舞台に出てきたのは、ピーター・フィリップスと、ソプラノ(2)、アルト(1)、テノール(1)、バス(1)だけ。そして舞台に向かって右側の3階席にテノールのサイモン・ホール、そして右側にソプラノ(2)、アルト(1)、バス(1)の4人。この3カ所で、それぞれ歌われるのだ。ホールは大ホールでかなり大きかったのだが、それをまったく気にしないのか、これだけ3つのグループが離れているのに、ちゃんと調和して声が聴こえてくる。特に3階席から歌われている部分では、まさに天から歌声が降ってくるようだった。前回同様、曲が終わると、もの凄い拍手とともに、大きなどよめきが起こった。以前にこの恐ろしい演出に心底びっくりしたのだが、何度聴いても驚かされる。

前回聴いた時とメンバーがかなり変わっていたが、それでも一切その質の高さは揺らいでいなかった。歌っているのは最大でもわずか10人である。人間の声も「楽器」であると思っているが、彼らはそれをはるかに超えるところに存在している感じがする。同じ人間の世界とは思えない。彼らが「天国からやって来たグループ」であると言っても、誰も疑わないだろうと思う

プログラム

パレストリーナ;立ち上がれ、輝け、イエルサレムよ(第1部)
パレストリーナ;教皇マルチェルスのミサ曲

休憩

アレグリ;ミゼレーレ
クローチェ;我らの大地は賛美の歓びに沸く
ガブリエリ;ほむべきかな、主なるイスラエルの神
フェスタ;汝は何と美しきことか
パレストリーナ;うるわしき救い主のみ母
パレストリーナ;しもべらよ、主をたたえよ

アンコール

ロッティ;十字架にかけられて

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