Vivaldi: Sonate a Violino, e Basso per Il Cembalo (Op. 2)
「Antonio Vivaldi: Sonate a Violino, e Basso per Il Cembalo (OPUS. II)」(Enrico Gatthi & Ensemble Aurora, GLOSSA, GCD 921202)
バロック期の作曲家の中で、知名度があっても、ある意味「不当な評価」をされている作曲家を挙げるとしたら、ヴィヴァルディだとわたくしは思っている。
古楽器による演奏を聴いている方々にとっては、ヴィヴァルディの古楽器で演奏されたたくさんの曲をご存知のはずだと思うし、わたくしのCD棚にもヴィヴァルディの作品はたくさん並んでいる。
では何故「不当な評価」という表現をしたかというと、ご想像の通り、あの有名な「四季」の印象が強すぎて、普段バロック音楽を聴かない人にヴィヴァルディの話しをすると、作曲家の名前を知っていても、「四季」以外の曲が出てこないのだ。この曲自体は、12曲の協奏曲からなる「和声と創意の試み(作品8)」の最初の4曲である。たしかにかなりのインパクトのある曲であり、四季の部分については、その季節が音楽を通して目に浮かんでくるほどだ。それくらいすごい曲なので、そこへイメージが集中してしまうのだろう。ここではこの曲は本論からはずれるので割愛するが、「私的CD評」さんの「今更ながら、バロック音楽の定番、ヴィヴァルディの「四季」」に詳しい記事が書かれているので、そちらを参考にしていただきたい。
さてそのヴィヴァルディだが、生涯にかなりの曲をかいている。600〜700曲とも言われる多数のソナタや協奏曲、それ以外にもオペラや宗教曲もかいている。ところがその数の多さゆえに、
「一曲の協奏曲をかき、後は数百曲の編曲をしただけだ」
という酷評までされている。この理由の一つには、ヴィヴァルディの協奏曲の形式が、
急ー緩ー急
の形式で書かれているものが多いためで、どれも似ていると勘違いをされるのであろう。しかし実際のところはとてもいい曲が多いのだ。
いつものように前置きがかなり長くなってしまったが、本論に入ろう。今回紹介する曲は、
「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集 Op.2(全12曲))」(1709年、ヴェネチア刊)
の中から、
第2番イ長調 RV 31
第3番ニ短調 RV 14
第4番ヘ長調 RV 20
第7番ハ短調 RV 8
第1番ト短調 RV 27
第9番ホ短調 RV 16
第5番ロ短調 RV 36
の7曲である。この曲集であるが、謝肉祭を見るためにヴェニスを訪れていたデンマーク王フレゼリク4世に献呈されたものである。元々は作品番号がついていなかったのだが、1712〜13年頃にアムステルダムのロジェによって再刊された際に「作品2」とされた。
「2つのヴァイオリンとヴィオローネまたはチェンバロのための室内ソナタ集(作品1)」(1705年、ヴァネチア、G. サラ刊)と同様に、室内ソナタ形式で書かれている。アルマンド、サラバンド、クーラント、ジーグ、ガヴォットなどの舞曲やカプリッチョやファンタジアなどが含まれる曲も入っている。
この曲集であるが、ヴァイオリンの魅力に溢れており、イタリアが「ヴァイオリン大国」であることを再認識させられる曲集であると思う。
演奏はバロック・ヴァイオリン奏者の中でも、大好きな一人であるエンリコ・ガッティ。イタリア人作曲家の演奏にこだわってたくさんの録音をしており、最近上述の「2つのヴァイオリンとヴィオローネまたはチェンバロのための室内ソナタ集(作品1)」の全集を同レーベルから発売したばかりである。
ファビオ・ビオンディやイル・ジャルディーノ・アルモニコのような「ラテンの血が騒ぐ」的な演奏とは対照的で、じっくりと歌うように聴かせてくれるヴァイオリニストである。その意味では「イタリア人ぽくない」とも言える。それはともかく、ヴァイオリンの音が実に美しい演奏家である。
さて、もう一度ヴィヴァルディの不当評価への抵抗をもう少ししておきたい。従来はヴィヴァルディの曲は、弦楽器の曲の録音が圧倒的に多かった。しかしここ数年で声楽曲の録音が増えてきたと思う。まだ全部を把握していないので、今回は詳しく述べることができないが・・・。いずれにしても「四季」は「すごい」曲であるが、ヴィヴァルディは決してそれだけの作曲家ではない、ということは最後に強調しておきたい。
演奏:
Enrico Gatti : Violin (Nicola Amati, Cremona 1652)
Ensemble Aurora :
Gaetano Nasillo : Cello (Barak Norman, London c. 1710)
Monica Pustinlinik : Archlute (Francisico Ervas, Granada 1993)
Guido Morini : Harpsichord (Franco Facchni, Ravenna 1992 ; after a late 17th-century model from the Hubsburg area)
録音:Abbazia di S. Basilide, S. Michele Cavana (Langhirano, Italy), in June 2005


ご指摘の通り、ヴィヴァルディに対する評価は、必ずしも高いとは言えませんね。「四季」があまりにも有名になった一方で、協奏曲だけでも膨大な数があって、どれから聴いたらいいのか分かり難いところがあるのでしょうか?作品8の「和声と創意の試み」や作品3の「調和の幻想」のような出版された作品では、形式的に整っている一方で、ヴァイオリンの技巧を表に出した作品や、様々な楽器のための作品、協奏曲だけではなく、ソナタ、それに声楽作品まで加えると、実に聴きごたえがあります。どうか折りに触れヴィヴァルディの作品をご紹介下さい。
コメント時刻: 2008年05月24日 17:46
コメント有り難うございます。
確かに協奏曲の数が多すぎて、どれから聴き始めるか?というジレンマのようなものがありますね。
わたくしの母が「四季」の大ファンで、折に触れて父に聴かせてくれと頼んでいます。「ヴィヴァルディにはもっと他にもええ曲があるねんけどなあ・・・」と苦笑している中で育ってきましたので、この記事を書きながら、二人のそのやり取りを思い出していました。
まだまだCD棚にたくさんヴィヴァルディの作品がありますので、四季以外の曲を紹介しながらも、「不当評価」へ対抗していきますね
コメント時刻: 2008年05月25日 14:20