古楽の愉しみ−魅惑のヴァイオリン・ウィーク−バッハ無伴奏ヴァイオリン エレーヌ・シュミット
演奏:エレーヌ.シュミット
演奏場所:2008年6月7日、兵庫県立芸術文化センター 小ホール
使用楽器:カミッロ・カミッリ(18世紀初頭)
バロック・ヴァイオリン奏者の中で、一番好きなヴァイオリニストの一人、エレーヌ・シュミットのコンサートに行ってきた。先日行ったバルトルド・クイケンのコンサートと同じ兵庫県立芸術文化センター 小ホールであるが、ここはちょうど室内楽を聴くには適した大きさのホールである。席もま正面で、演奏している彼女をしかっりと見ることができた。
今回は、ヴァイオリンを演奏する人達にとっての究極の到達点となるバッハの「通奏低音伴奏なしの6つのヴァイオリン独奏曲(無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ、BWV1001〜1006)」から、以下の三曲が演奏された。
今回の演奏曲目は、
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 BWV1003無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ホ長調 BWV1006
休憩
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004
ニコラ・マテイス:パッサージュ・ロット(アンコール)
残りの三曲は、東京で一回だけあったようだが、これは仕事の都合で行けなかった。
さて今回のハイライトはもちろん、最後の「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004」だろう。その中のチャッコーナが聴きどころだ。最初の4楽章が終わった後、ちょっと汗を拭ってから、楽譜を並べ直していた。かなり長い曲だったので、譜面台を二つ用意して、楽譜をめくることなく全体を見れるように配慮していたようである。
このチャッコーナは、何度聴いても感動を覚えるが、始めて生で聴いたこと、その演奏者が大好きなエレーヌ・シュミットであったこともあって、本当に感動した。ヴァイオリン一挺の中に秘められた可能性を究極まで追求した曲だと思う。それは聴くものにとっては感動という言葉で表現できるが、演奏者にとっては、精神的にも肉体的にも相当な負担がかかるものだとわかった。チャッコーナの演奏が終わった後、汗を拭って挨拶をして、一旦ステージから出てゆき、拍手で戻ってきたのだが、アンコールを始めるにあたって、
「シャコンヌを演奏すると、ひどく体力を消耗するのですが、今日は日本での最後のコンサートですので・・・」
と言って、ヴァイオリンの小品を演奏した。その曲なのだが、会場の外にアンコール曲がなんであったか張り出されていたのが、「ニコラ・マテイス:パッサージュ・ロット」と書かれていた。この作曲家だが、不勉強のため誰なのか未だに不明である。
彼女の「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」は、αーレーベルから発売されていて、
「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番・パルティータ第1・2番」(Alpha082)
「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番・第3番・パルティータ第3番」(Alpha090)
で聴くことができる。この二枚は本当に名演なので是非聴いて頂きたい。そしてできれば自筆譜を入手して、それを見ながら聴いて欲しい。「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」の自筆譜は、その美しさでも有名で、「BIBLIOPOLY」で入手できる。12000円程だ。製本版とともにpdf版も入手できる。
彼女の演奏の特徴は、「語るように弾く」というところにある。実際にところ、上で紹介した二枚のCDの録音にあたって彼女はかなり苦悩していたことをCDのブックレットに書いている。
バッハの『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』を演奏披露するということは、とりもなおさず、その深遠さと向き合うとともに、またドイツ文化というものと向き合うことを意味するのではないだろうか・・・(中略)
私のアプローチは、実に混沌としたものだったードイツ文学にたいする非常識なまでの情熱に身も焦げつかんばかりな一人のフランス女が、古い伝説の末にある街の情景にコカコーラの看板がアクセントを添えている現代のドイツで、深遠さにたどりつく道をみつけようとするのだから、大変なものだ・・・(中略)
他の何物にもまして強く想像世界へと人をいざなうのは、まさにバッハの音楽に他ならないのではないか?彼の音楽はそれを解釈しようとする者を、それまで培ってきた理論体系や知識をいったん放棄せざるを得なくなるような、そんな深淵へとひとたび突き落とすのだーごく親密で内面的な、ある種の真実に貫かれた、輝かしい光を放つ真の音楽の道筋をそこから見つけよ、といわんばかりに。
そうー私にとっては、そうしたものこそが根本的にドイツ的なるものであり、また同時にそうしたものこそが根本まで宿っているのが、バッハの音楽なのである。
CDの解説より
ここに彼女の語るように演奏するという姿勢があるのではないか?と思う。
この引用の部分を読んでいて、かなり神経質な女性だと思っていたが、コンサートが始まり、ステージに登場した彼女は、ぴょんと跳ねるようにステージに上がり、にこやかにステージ上を一周してオーディエンスに挨拶をしていた。神経質さとはまったく逆のイメージだった。でも演奏となると、さすがに凄まじかった。
コンサート後にサイン会があって、サインを頂いくことができた。とても気さくでキュートな方であった。。サインを求めた一人一人の名前を聞いて、じっくりと話し聞いてもらえた。かなり感動したので、
「あまりに素晴らしすぎて、あなたの演奏に対して適切な言葉が見つかりませんが、たった一つだけ「beyond description」と言えるだけです」
と言うと、とても喜んでもらえて、両手でぐっと握手をしてくださった。
上が頂いたサインだが、サインにハートマークを書いたクラシックの演奏家は彼女がはじめてだ。CDで優れた毎日聴いているが、やはり生演奏にはかなわないなと思った。本当に感動した一日だった。偉大な作品を残したバッハと、それを見事に感動という形で演奏してくれたエレーヌ・シュミットに感謝する


こんにちは。
エレーヌ・シュミット、生で聴かれたのですね。いいですねー。
彼女が演奏したシュメルツァーのCD(アルファ)を持っていますが
とてもすばらしかったです。
Nicola Matteis(?~1714?)
は、ナポリに生まれイギリスに渡って活躍、ロンドンに没したといわれる
ヴァイオリン奏者/作曲家ですね。
Passaggio rotto は、ヴァイオリン曲集第2巻に含まれる「組曲イ短調」の第3曲です。
The Arcadian Academyの演奏するCD(HMF HMU907108)がありますが
残念ながら現在入手困難かもしれません。
コメント時刻: 2008年06月08日 06:05
おはようございます。
お返事を差し上げるのが遅れて申し訳ありません。
ご紹介いただいたCDですが、海外のサイトにあったので注文していたのですが、先日ようやく届きました。中々いい感じでの曲ですね
コメント時刻: 2008年06月23日 08:43