W. F. バッハ;シンフォニア集
「W. F. バッハ:シンフォニア集」(ラフェエル・アルマーマン(チェンバロ)、ベルリン古楽アカデミー、harmonia mundui、HMC901722、KKCC-478)
バッハの長男である、ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハは、バッハ自身が自分の息子の中で一番愛情をそそいで教育をした人物であるにも関わらず,彼の作品はあまり録音されることは少ない。C. Ph. E. バッハの録音数と比較すれば歴然としている。
1710年にヴァイマールで生まれた。あの「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのための鍵盤練習帳」を、この息子が9歳の時から編纂し始めたことからも、将来を期待していた事が伺われる。
1723年にバッハ一族がライプツィヒに移り住んだ際に、トーマス学校に入学。その後1729年にライプツィヒ大学へと進学。1726年から1727年にかけて、ヨハン・ゴットリープ・グラウンにヴァイオリンを学んでいる。
1733年に、ドレスデンにあるソフィア教会のオルガニストに就任した(前職のクリスティアン・ペーツォルトの死により空席となったため)。ここで彼は本格的に作曲活動を始める。その中には、フルートのための作品、鍵盤楽器用の作品、協奏曲などが含まれている。
1746年、バッハの助力により、ハレの中央教会のオルガニストに応募して、合格。その地位を得る。ここで約18年間職をまっとうするが、音楽監督を兼任していたため、教会音楽もたくさん作曲している。
しかし、父の死後、ハレでの生活の悪化、さらには教会との関係の悪化のため、彼は1764年オルガニストの職を辞する。こうした経緯があり、彼は貧困のうちに生涯を閉じることとなる。
大バッハは彼のことをかなり期待していたにも関わらず、世渡りが下手であったこと、そして生まれつきの性格もあったのだろう、決してうまく時代に乗って世の中を渡ったわけではなかった。しかし、その彼の性格は、彼の自由な音楽に現れている。
さて、このCDに収められた曲は下記の通りである;
1)シンフォニア ニ長調 Fk64
2)アダージョとフーガ ニ短調 Fk65
3)チェンバロ協奏曲 ホ短調 Fk43
4)アダージョとフーガ ヘ短調
5)シンフォニア ヘ長調 Fk67
ここに収録された楽曲を聴く限りでは、彼の音楽は「バロック」時代の音楽から一歩進んだところにあるように感じる。特にシンフォニアにはどちらかというと古典派の音楽を想起させる。もちろん、中には「シンフォニア ニ短調 Fk65」のように、1740年頃のドレスデンで演奏されていた宗教音楽のスタイルと一致しているし、それなりに彼もその時代に合わせた音楽を作曲していたことがわかる。
「チェンバロ協奏曲 ホ短調 Fk43」は、1767年、ザクセン王女であるマリア・アントニア・ヴァルプルギスに献呈されたものである。演奏自体は、彼が「演奏するのは易しい」と記載していた通りだが、全体を通して耳に馴染みやすく、その反面構成はソリストとオーケストラが複雑にからみあっていく。こうした構成は、父である大バッハの緻密な作曲方法を受け継いでいることを想像させる
演奏:
ラフェエル・アルマーマン(チェンバロ)
ベルリン古楽アカデミー
録音;
2001年10月、ベルリン

