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廉価考

2008年09月16日

このブログで何度か書いているが、父はクラシック・マニアで、物心ついたときから、家の中では普通にクラシック音楽が流れていた。その中で、モダン楽器を使った演奏にアレルギー反応を起こしつつも、古楽器という素晴らしいものに出会い、今は苦手としていたクラシックも、古楽器で演奏されたものであれば、ずっと聴いていることができる。

父はバロックに限らず、満遍なくクラシックと言われる音楽を聴く人である。わたくしがバッハを聴き始めた頃、わたくしは当然鍵盤楽器に関しては、グスタフ・レオンハルトしか考えられなかった。今でも圧倒的な頂点に君臨しているのは言うまでもない。自分の部屋ではレオンハルトの音楽に陶酔していたが、父の部屋ではバッハの鍵盤音楽は、チェンバロの時もあればピアノの時もあった。むしろピアノの方が多かったと思う。これはわたくしがバッハのクラヴィーア曲のほとんどを、レオンハルトの録音でそろえてしまったこともあり、同じCDが二枚家にあっても仕方がないという理由もあっただろう。

その父が好んで聴いているピアノ演奏が、アンドラーシュ・シフによるものだ。バッハのピアノといえば、グールドが出てくるのだろうが、父はなぜかわたくし同様グールドを苦手としていた。そういう意味で、バッハのピアノ演奏というのは、シフの演奏なのだ。

いつものように前置きが長くなったが、古楽器を専門にしているこのブログであえてピアノを取り上げたのは、今日のタイトルと関係する。先週HMVのサイトをうろうろしていたら、シフのCDを見つけた。

「鍵盤楽器のための作品集 アンドラーシュ・シフ(12CD)」
オンライン会員特価(税込): ¥4,621
一般価格(税込): ¥5,135

1982-91年にDECCAでなされたデジタル録音を一気にまとめて発売されるのである。1枚500円もしないのだ。

CD1
・インヴェンションとシンフォニア BWV.772~801
・4つのデュエット BWV.802-805
・半音階的幻想曲とフーガ BWV.903
CD2
・平均律クラヴィーア曲集第2巻第1~13番 BWV.870-882
CD3
・平均律クラヴィーア曲集第2巻第14~24番 BWV.883-893
CD4
・ゴルトベルク変奏曲 BVW.988
CD5
・イギリス組曲第1~3番 BWV.806-808
CD6
・イギリス組曲第4~6番 BWV.809-811
CD7
・フランス組曲第1~4番 BWV.812-815
CD8
・フランス組曲第5~6番 BWV.816-817
・イタリア協奏曲 BWV.971
・パルティータ(フランス序曲)BWV.831
CD9
・パルティータ第1,2,6番 BWV.825,826,830
CD10
・パルティータ第3,4,5番 BWV.827,828,829
CD11
・平均律クラヴィーア曲集第1巻第1~12番 BWV.846-857
CD12
・平均律クラヴィーア曲集第1巻第13~24番 BWV.858-869

バッハの主要なクラヴィーア作品をほとんど網羅している。個人的にはグールドのピアノよりもずっとすっきりとしていていいと思うのだが、その価格を見て何か釈然としないものを感じるのである。

たしかにシフのCDを持っていない人にとって、そしてバッハの演奏を聴きたい人にとっては実に魅力的な価格である。ただ、最近こうした過去に録音されたものが、ボックスセットの形で、1枚数百円(大抵は500円以下)で売られているのを見ると、過去に乏しい小遣いをやりくりして、毎月1枚ずつそろえていたのは何だったのか?と思うのだ。

先日も、バッハのオルガン全集(15CD、アランの1回目の録音)が、7000円ほどで店頭に並んでいた。これも一枚一枚買っていた時は、かなりの値段がしたものである。

ブリリアントやNAXOSといった廉価レーベルの出現は実にうれしい。しかしその反面、あまりの価格の下落を見ていると、なんとも表現しがたい複雑な思いにかられるのだ。

クラシックから話は離れるが、ジャズのある評論家が書いた本を読んでいて、面白いことがかかれてあった。ジャズもこうしたボックスセットが廉価で売られているのである。その筆者は、そうしたボックスセットの購入を否定していた。その理由は、

ボックスセットで買ったCDというのは、往々にしてCD棚の隅に置き去りにされ、ほとんど聴かれることのない運命になることが多い、

というものだ。たしかに、ボックスセットを買うと、安心してしまう。それが廉価であれば、いつか聴こうと思って、とりあえず放置してしまいがちなのだ。それよりも、苦労して入手した一枚というのは、やはり有難く聴いている感じがする(もちろん、これはわたくしの個人的な体験である)。
今でこそ働いているので、月々それなりに給料というものを頂いているけれど、お小遣いをもらっていた時や、小遣いが支給されなくなりアルバイトをしていた頃というのは、本当に一枚のCDを買うのにかなり悩んだ。だからこそ、そのときに買ったCDやレコードは繰り返し聴いた。CDやレコードのことを「アルバム」ということがあるが、まさにそうした苦労して買った時の思い出がつまった「アルバム」なのである。そのアルバムを聴けば、当時自分がどういう状況だったのかも浮かんでくる。だからこそ「アルバム」という表現は実によく的を得た表現だと思っている。

こうして廉価で入手できることを、素直に幸いと思えないのは、単に年をとっただけなのだろうか?

パイプ・リスト

2008年06月03日

レオンハルト、アーノンクール、ブリュッヘン、クイケン兄弟、ビルスマ達が古楽器を用いたオーセンティックな演奏を始めてから、たくさんの古楽器を用いる演奏団体、ソロの演奏家が出てきた。最近ではナクソスやブリリアントといった廉価レーベルでも、バロック時代の音楽を古楽器で演奏した作品をリリースしている。今や古楽器を用いることは特殊なことではなくなっていると思う。そんな中、世界にどれくらいの古楽器の演奏団体があるのか?ということを考えるのだが、便利なサイトがあるので、今回はそれを紹介したいと思う。

「The PIPE List」

である。これは、

The "List" of Period Instrument Performance Ensembles

の略だそうだ。古楽器で演奏する団体のリストである。ここを見てみると、ものすごい数の団体が世界中に存在することがわかる.単なるリストだけではなく、その団体がHPを持っている場合はそこへリンクしているし、その団体の簡単な履歴なども知ることができる。

最近はたくさんのCDがリリースされるが、古楽器で演奏されたものなのか、モダン楽器を用いたものなのかわからない場合があり、そういう場合にこのリストでチェックして購入するようにしている。

また、このHPのカテゴリーの一つに、

「Authentic Performance Recording Labels」

というものもあり、こちらは古楽器で演奏されたCDをリリースしているレーベルを網羅している。勿論リンクも貼られているので、何かと便利である。

このHPのリンク集「Period Web Links」も非常に充実していて、様々なカテゴリーに分類されていて何かと重宝する

なぜ古楽器にこだわるのか?

2008年05月10日

このブログで取り上げているのは、タイトル「素晴らしき古楽の世界」からわかっていだけると思うが、「古楽器」を用いて演奏されている、ということが大きな前提となっている。

クラシックを聴くという話しをする時に、「古楽器」とか「古楽」という言葉を出すと、古典派以降の音楽をメインに聞いている方から、

「古楽器、古楽ってなんですか?」

という質問を受ける。それに対しては、「その当時に使われていた楽器、もしくはそのレプリカを用いて、当時の奏法、音律などをもとに、当時の演奏を再現すること」だとこたえることが多い。

それに対して、

「なぜそれにこだわるのか?」

ということを聞かれることが多い。
古楽器であるとか、古楽という言葉を限定するのは中々難しい。現在では古典派くらいまでは、古楽器で演奏しているものが非常に多くなっている。わたくしは古典派以降は門外漢なので、まったく聞かないのでそれについては触れることはないけれど、なぜ「こだわるか」という質問に対する答えは明確にしているつもりだ。それは、

作曲家が作曲した際に用いていた楽器(古楽器)の響き、特徴は、それに対するモダン楽器とは異なるからである。バッハはたくさんのクラヴィーア曲を残しているが、それをピアノで演奏するというのはわたくしは反対である。バッハの時代、フォルテピアノがあったことはわかっている。これはバッハがポツダムに赴いた時に、フリードリヒ大王の前で試奏したことがわかっているからである。しかしバッハはフォルテピアノに対してはあまり高い評価を与えていなかった。したがって、当時バッハはクラヴィーア用に書いた曲は、ハンマーを叩いて音を出すピアノを想定、イメージして書いたものではなく、チェンバロやクラヴィコードを意識して(その特徴、響き)書いたことだろう。
他の楽器についても同じで、独奏曲だけでなく、協奏曲や管弦楽組曲などにしても、楽譜に指定している楽器は、書かれた曲をもっとも引き立たせるために、作曲家が指定しているのだろう。リュート族、リコーダー、チェンバロはバロック時代以降姿を消してしまった。これは音楽全体が大きながさつな音で奏でられるようになったからで、バロック時代では当時の楽器の特性を考えると、リコーダーやリュートといった音の弱い楽器でも、充分に他の楽器とともに旋律をもって存在しうるのである。
作曲家はその当時にあった楽器を使うことで、その魅力、特性を充分に発揮できる、またはその楽器だからこそ自分のイメージした曲が書けた、と思うのだ。

また楽器だけでなく、音律やピッチについても当時使われていたものを用いるということはもちろんのことである。当時の作曲家は、調性というものをよく知っていた。どの調性を使えば哀しさを表現でき、または楽しさを表現できることを知っていた。当然そこには音律も考慮されていることだろう。

つまり現代にあっても、その時代(ここではバロック時代に限定するが)で使われた楽器を使うことは、単なる当時の音楽の再現だけではなく、作曲家へ対する最大の礼儀なのだ。

バッハの自筆譜

2007年06月15日

恐らくヴァイオリンを演奏する人達にとって、究極の目標となる「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(BWV1001-1006)」の自筆譜が届きました。と言っても、もちろん本物が届いたわけではなく、ベルリンの国立図書館に所蔵されている自筆譜のファクシミリ版を製本したものです。

毎月定期購読している古楽の情報誌「アントレ」の最後の方のページに、「BIBLIOPOLY」というところが「デジタルファクシミリ出版と複写物入手サービス」という広告をいつも載せているのです。そこに、

自筆譜として比類無い美しさを有することでも有名な、J. S. Bachの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(ベルリン国立図書館所蔵)の版権を取得。世界で初めてのデジタルファクシミリ版の販売を開始します。CD-ROM版と冊子体(Comb Ring製本)のセットでご提供致します。

と書かれていて、少し前から気になっていて、先週申し込んでいました。仕事から帰ってきたら、ポストに大きな封筒が入っていました。早速中身を開けてみると、自筆譜のファクシミリ版を綺麗に製本したものと、CD-ROMが入っていました。

これがその表紙です。これがバッハの自筆かと思うと感動がありました。

これは有名なパルティータ2番の中の「シャコンヌ」の冒頭のところ。う〜ん、絶句。

嬉しいのは、冊子体だけでなくCD-ROMにその自筆譜をPDFファイルにしたものが入っているということ。いつでも打ち出しをして見ることができます。嬉しくて、一部をパソコンのデスクトップに貼付けるように加工してみました。仕事をしながら、いつもバッハの自筆譜を眺めることができるって幸せですね。

これで12000円ってあまりにもお安いです。まあこういうものは値段の問題ではないですね。いわば人間の創造した芸術作品であって、ここまでくると歴史的遺産だと思います。色んなところが「世界遺産」に登録されていますが、こうしたものも世界遺産にして欲しいものだと思います。

それにしても今日は嬉しいプレゼントが届いたな・・・。時間がなくて実際に曲を聴くことができませんでしたが、後日ゆっくりと聴いてみたいと思います。楽しみが一つ増えたな・・・

レコード芸術について考える

2006年11月25日

クラシックの専門誌に「レコード芸術」という雑誌があります。クラシックファンの中には購入されている方も多いかと思います。今日はこの雑誌について、この数ヶ月思っていることを書いてみたいと思います。

正直なところ、最近買ってまで読む価値があるのか?と思っています。内容が明らかに何年も前に比べて落ちているとしか思えないのです。もちろん僕自身が古楽を専門に聴いているので、クラシック全体を扱っているから読むべきところが少ないというのは、大きな要因ではあると思います。
それでも新譜案内にしても今一つに感じますし(もちろん評論家が嫌いだという理由が大きいのですが)、それ以外の特集記事も面白くないなと思います。この一年くらいまともに読んでいるのは「ムーサの贈り物」くらい。これだったらそこだけ立ち読みした方がいいじゃないかと思います。
サンプルCDもついていますが、この選曲も正直なところ、封を開けて聴こうとは思えない内容。
こうした内容の雑誌に1250円を払う価値があるのか、最近疑問に思っているのです。それでこのところ考えているのが、読むところのないものを買うよりは、「ナクソス」でCDを一枚買った方がいいのではないかと。
ナクソスはご存知の通り、一枚1000円(中にはそれ以下のものもありますが)ですからね。確かに廉価盤ではありますが、ちゃんと古楽器を使っていい演奏のものもかなり多いのも事実です。実際僕はこのレーベルでたくさんCDを出している「オックスフォード・カメラータ」は大好きです。

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それに品揃えが多いですからね。
そんなわけで、今月からはレコ芸を買うのをやめて、ナクソスでCDを一枚買おうと思います。

音楽室〜さややかなオーディオルーム〜

2006年11月19日

今僕が住んでいるマンションは、かなり広くて(独り暮らしにとっては)、2LDK、ロフト付き、庭付きという、大変贅沢なところです。二つの部屋の内、片方を生活の基盤として、もう片方の部屋をいわゆる「オーディオ・ルーム」にしました。
部屋は完全に音楽を聴くための部屋です。上が私のささやかなオーディオセットでございます。

・CDプレーヤー:marantz : CD880J
・アンプ:Triode : TRV-A88S(真空管アンプ、右のやつです), marantz PM-50(夏場は真空管アンプは暑いので、こちらを使っています)
・スピーカー:COLUMBIA LSA VS-5AM(クラシック用)、KENWOOD LS-E9(その他の音楽用)

普段は仕事で忙しくて、家に帰ってからゆっくりと音楽が聴けませんが、休みの日は、このささやかなセットの前に座って、コーヒーを飲みながら、古楽を聴くのが、僕にとって最高の贅沢であり、至福の時ですね。

バッハ最古の手書き譜発見 オルガン曲を写譜

2006年09月01日

バッハは子供の頃、月明かりの下でこっそりと写譜をしていた話は有名ですが、その手書き譜が発見されたそうです。

【ワイマール(ドイツ東部)31日共同】ドイツの作曲家ヨハン・セバスチャン・バッハ(1685-1750年)が手書きで写譜したオルガン曲の楽譜がドイツ東部ワイマールで見つかり31日、ワイマールのアンナ・アマリア図書館で公開された。バッハの手書きの譜としては現存している中で最も古いという。  バッハが1698年ごろに書き残したもので、バッハは当時、13歳前後だった。音楽関係者は「修業時代のバッハがどのような勉強をしたかを知るための貴重な発見」としている。同時に1700年と記された別の写譜も見つかった。これまで自筆のものとして知られているのは1704年の自作曲が最古だった。

河北新報ニュース 2006年08月31日木曜日

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バッハは約半年かけて、従兄弟の持つ楽譜を写譜したのですが、結局それが従兄弟に見つかって取り上げられたというのは有名な逸話ですね。
昨年もアリアが発見されましたし、これからもどんどんと見つかることを期待しています。特にバッハは、5つの受難曲を書いたといわれていますが、完全な形で残っているのは、マタイとヨハネ受難曲だけですから、残りの3つが出てくるといいですね。

クラシック音楽の楽しみ

2006年08月20日

クラシック音楽を聴く大きな楽しみ。
それはたくさんあると思います。

いわゆる「名盤」「名演」とされるものを聴くこと
好きな演奏家による好きな作曲家の演奏を聴くこと

なんかが挙げられると思います。私が個人的にクラシック音楽を聴いていて楽しいと思うことがあります。それは、同じ曲を様々な演奏家による演奏を聴くということです。つまり聴き比べですね。
ロックやポップスなどでは、超有名曲なんかがカヴァーされることがありますが、そんなに多いことではないと思います。それに比べると、クラシックというのは、何百年も前の作曲家の楽譜をもとにして、様々な演奏家が演奏するわけです。
例えば、ヴィヴァルディの「四季」などは、超がつくくらい有名な曲ですから、CDショップなんかに行けば、山のようにCDが並んでいます。これを色々と買ってみて、聴き比べをするのですね。
もちろん演奏には個人の好みがありますから、好き嫌いが出て当然です。それでもこうした名曲なんかをたくさん聴き比べてみると実に面白いですね。これがクラシックを聴く醍醐味だと思っています。

私は古楽をメインに聴きますので、古楽器による演奏を選ぶことになりますが、これも演奏家の解釈などをもとに聴いてみるととても楽しいですね。古楽のアプローチ自体が、楽譜に忠実であることにありますから、その考証をふまえた演奏は聴くほうにとっても、心して聴こうという気持ちになります。

バッハやモンテヴェルディなどはとても録音が多く、その私の楽しみを増やしてくれるので、好きな作曲家です。バッハはやはりレオンハルト氏の独壇場という感じですが、それでも最近の古楽器奏者の演奏を聴いてみるもの面白いものです。

モンテヴェルディは「聖母マリアの夕べの祈り」などが録音が多く、最近はこのCDを結構買っていますね。少し前に比べて、イタリアの古楽器団体が増えてきたこともあって、イタリア人作曲家の音楽を、イタリア人の演奏で聴くという楽しみも増えてきました。