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一曲だけ作曲した作曲家〜パッヘルベルの室内楽作品

2008年06月01日

「パッヘルベルのカノンー室内楽作品集」(ロンドン・バロック、harmonia mundi france、HMA 1951539)

先日ヴィヴァルディの不当評価を書いたが、たくさんの曲を書いているのに、一曲しか知られていない作曲家というのはたくさんいるもので、今回はその中の一人ヨハン・パッヘルベルを取り上げる。

一曲しか知られていないというのはもちろん、「パッヘルベルのカノン」という曲だけという意味である。当然そういう名前の曲を彼はかいておらず、「3つのヴァイリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」というのがその正式なタイトルである。「パッヘルベルのカノン」という名前が一人歩きするくらいにこの曲はインパクトがあるけれど、やはりそれだけでその作曲家を捉えてしまうことには抵抗を感じる。

パッヘルベルは、1653年、ニュルンベルクで産まれた。ウィーンでオルガンを学び、1673年にウィーン・シュテファン大聖堂のオルガニストに、1677年にはアイゼナハの宮廷オルガニストになった。その翌年、エアフルトの教会オルガニストになり、12年間とどまったが、ここでたくさんのオルガン曲を書いた。1695年からニュルンベルクの聖ゼバルドウス教会のオルガニストとなった。「南ドイツ・オルガン楽派」の一人である。
バッハの叔父の家に同居していたこともあり、バッハの長兄ヨハン・クリストフは彼の弟子であり、バッハがパッヘルベルの作品を兄に隠れてうつしていた話しは有名だろう。

生涯のほとんどをオルガニストとして過ごしているため、オルガン作品をたくさん残しているようだが、案外録音が少ない。全集のようなものを見かけたことがない。またチェンバロのための作品も残している。

今回紹介するのは、そのオルガニストが少ないながらも残した室内楽作品である。

1)音楽のたのしみ、6つのパルティータ集(3声、1695年、ニュルンベルク刊)
2)3つのヴァイリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調
3)4声のパルティータ ト短調
4)4声のパルティータ 嬰へ短調
5)4声のアリアと変奏曲
6)5声のパルティータ ト長調

これが現存するパッヘルベルの室内楽曲のすべてである。

「音楽のたのしみ、6つのパルティータ集」はタイトルの通り6曲からなり、

第1番;ヘ長調
第2番;ハ短調
第3番;変ロ長調
第4番;ホ短調(スコルダトゥーラ指定)
第5番;ハ短調
第6番;変ロ長調

となっている。

「3つのヴァイリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」は、「パッヘルベルのカノン」でお馴染みの曲で、マリナー、パイヤールのような室内オーケストラの演奏が有名であるが、最近は古楽の団体がオリジナルの楽器編成で演奏しているのを聴けるようになった。まあ、たしかにあのカノンの部分は実に印象的だが、その部分だけが取り上げられ、他の部分が聴かれないというのは不思議なことだ。マリナーやパイヤールの演奏を聞き慣れた人にとっては、あっさりと曲が終わってしまうので、意外に感じるかもしれない。

今回取り上げたロンドン・バロックのCDでは、「4声のアリアと変奏曲」だけが収録されていない(ムジカ・アンティカ・ケルンが録音しているらしいが未聴)が、ほぼ彼の室内楽曲の全集という感じだろう。

どの曲も優しく親しみやすく聴きやすい

演奏:London Baroque
Violons ; Ingrid Seifert, Andrew Manze
Violons & alto ; Richard Gwilt, Irmgard Schaller
Violoncello & viole de gamba ; Charles Medlam
Clavecin, Organ ; Richard Egarr
Theorbe ; William Carter