BWV1013 無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調
成立:1724年、ライプツィヒ(?)
楽章編成:
第1楽章:アルマンド(4/4)
第2楽章:コレンテ(3/4)
第3楽章:サラバンド(3/4)
第4楽章:ブレー・アングレース(2/4)
現在知られている唯一のバッハの無伴奏フルート曲。写筆譜のタイトルには、
Solo pour la Flute traversiere(横型フルートのためのソロ)
と記載されています。4つの舞曲を組曲風に連ねたものですが、通常組曲の最後にあるばずのジーグがありません。
とにかくものすごい超絶技巧を要する曲。
第1楽章のアルマンドは休符がない16分音符音型の連続で、フルートの音域を目一杯使って縦横無尽という感じで駆け巡ります。最後の音はトラヴェルソで一番高い音で終わります。
第2楽章のコレンテ(クーラント)は、凝った多彩な音型がたくさん現れます。
第3楽章のサラバンドは打って変わって、しっとりと
第4楽章はスピードを上げて、躍動感のある軽快に
という感じの4つの組曲からなっています。
演奏:バルトルド・クイケン(フラウト・トラヴェルソ)
演奏場所:兵庫県立芸術文化センター 小ホール
最初の画像の通り、今日はCDではなく、コンサートで聴いてきた生演奏から。
上に書きましたが、超絶技巧を必要とする曲。CDで聴いていてわかりますが、実際に演奏しているバルトルド・クイケン氏を見ていると、それがとてもつもなく凄まじいことがわかります。
ところが、それを難なく演奏するところも、バルトルド氏のものすごいところ。第1楽章のアルマンドを楽々と吹いている姿を見て、唖然としました。そして深く暖かみのある音。CDも素晴らしいですが、実際の演奏を聴くと、そのすごさが倍増しますね。
超絶技巧と書きましたが、バッハは演奏するのが非常に困難な曲が多いのに(泣きそうになるくらい)、かつ音楽として非常に美しいのです。パガニーニのカプリースや、リストの超絶技巧練習曲などは、テクニカルな面ですごいと思いますが、メロディーが美しいとはわたくしは思いません。しかしバッハは困難であるだけでなく、曲自体が極限まで素晴らしいのです。
さて、今日のコンサートですが、
「バルトルド・クイケン〜フルートとチェンバロによるバッハの調べ〜」フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV1034
フランス組曲 第5番 ト長調 BWV817
フルートと通奏低音のためのソナタ ホ長調 BWV1035
(休憩)
無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013
フルートとチェンバロのためのソナタ ロ短調 BWV1030
アンコール1回目:
オブリガートチェンバロとフルートのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031 よりシチリアーノアンコール2回目:
フルートと通奏低音のためのソナタ ハ長調 BWV1033 よりメヌエットフラウト・トラヴェルソ:バルトルド・クイケン
チェンバロ:エーヴァルト・デメイエル
というプログラム。アンコールの2曲は偽作(もしくはその疑いが強い)とされているもので、演奏はしないかな?と思っていたのですが、有名なシチリアーノなので、アンコールで出てきましたね。
今日は休憩後、最初に演奏された無伴奏フルート曲を紹介しましたが、ちょっとしたアクシデントが。観客席の照明が落ちて、ステージにトラヴェルソを持って一人で現れたバルトルド氏。しばらくステージの上を歩いた後、突然両手の親指と人差し指で丸い形を二つ作り、両目に。
メガネをお忘れに・・・。
笑いが起きました。しばらくして無事にメガネを持って再登場。また笑いが。そしていきなりの超絶技巧のフレーズでした。
以前にクイケン・アンサンブルのコンサートに行った時、アンコールの曲の時にもアクシデントがありました。チェロのヴィーラントが楽譜を見失ったらしく、メンバーが集まって全員で楽譜探しを始めたことがありました。クイケン家にはものを忘れる遺伝子があるのでしょうか?
コンサート終了後、サイン会があったので、お二人のサインを頂きました。
とても素直なわたくし。サインを頂く際に、素晴らしいステージを有り難うございました、と言った後に、「メガネをお忘れないように・・・」と言いました。
「Thank you.」
とにこやかにこたえて下さいました。
いい想い出がまた一つできましたね
かなり手ぶれしてしまいました・・・
さて、今回のコンサートの二人の演奏は下の2枚のCDで聴けます。
「J. S. Bach Flute Sonatas」(Barthold Kuijken、Ewald Demeyere, ACCENT, ACC 22150)

「Solo pour la flute traversière」(Barthold Kuijken, ACCENT, ACC 20144)

どちらもベルギーの名門レーベル「ACCENT」から発売になっています。ここはクイケン氏のお膝元だけあって、優れた古楽の演奏ばかり集まっていて、どのCDもお勧めです。

