BWV1079 音楽の捧げもの
「バッハ:音楽の捧げもの BWV1079」(バルトルド・クイケン、シギスヴァルト・クイケン、ヴィーラント・クイケン、マリー・レオンハルト、ロベール・コーネン、グスタフ・レオンハルト、SEONB20D-38010)
成立:1747年夏、ライプツィヒ
基本資料:自筆譜、オリジナル出版譜
楽章編成:
・3声のリチェルカーレ ハ短調 4/4(王の主題による3声フーガ。リチェルカーレはフーガの古称。楽器の指定はないが、チェンバロ独奏がふさわしい)
・王の主題による無限カノン ハ短調 4/4(原譜には2段の譜表に記されている。上段が王の主題、下段の旋律がソプラノとバスの音域にわかれ、王の主題を取り巻いて無限に繰り返す)
・王の主題による種々のカノン(5曲)
a) 逆行カノン ハ短調 2/2
b) 同度のカノン ハ短調 4/4
c) 2声部反行のカノン ハ短調 4/4
d) 2声部反行の拡大カノン ハ短調 2/2(楽譜の欄外に、「のびゆく音とともに王の繁栄の栄えんことを(Notulis crecentibus crescat, Fortuma Regis)」と書き加えられている)
e) 螺旋カノン ハ短調 4/4(螺旋を描くように、一回演奏するごとに一全音高い調へ移行する。ハ短調→ニ短調→變ヘ短調→変イ短調→変ロ短調→ハ短調(1オクターブ上の元の調)となる。「昇りゆく旋律とともに王の栄光の昇りゆかんことを」と書き加えられている)
・上方5度のフーガ・カノニカ ハ短調 2/2
・6声のリチェルカーレ ハ短調 2/2
・2声のカノン ハ短調 2/2(「尋ねよさらば見いださん」と欄外に記された「謎のカノン」)
・4声のカノン ト短調 4/4(同様謎のカノン)
・トリオ・ソナタ ハ短調(4楽章)
第1楽章:ラルゴ ハ短調 3/4
第2楽章:アレグロ ハ短調 2/4
第3楽章:アンダンテ 変ホ長調 4/4
第4楽章:アレグロ ハ短調 6/8
・無限カノン ハ短調 2/2
プロイセン大王フリードリヒ2世(大王、CDジャケットの男性)が提示したと単一主題に基づく曲集。1747年5月、ポツダムのフリードリヒ大王のもとをバッハは訪れました(フルートの名手であった大王のお抱えであったのが、バッハの息子の一人エマーヌエルで、バッハに会いたいと願ったからだと言われています)。大王はバッハにジルバーマン制作のフォルテピアノの試奏を請い、バッハが試奏。試奏の後、バッハは大王にフーガ主題の提示を求めます。そこで示したのが、この曲を通して聴かれる「王の主題」。これをもとに即興演奏を披露した、と言われています。後日、この主題による楽曲を楽譜にして1747年7月7日付けに大王に献呈、さらにいくつかの楽曲をつけたして、同年の9月末に出版。
たくさんの謎が散りばめられた曲で、王の主題による種々のカノンの「同度のカノン」、トリオ・ソナタと最後の無限カノン以外は楽器編成の指定がなく、一部のカノンは、いくつかの解決方法が可能な「謎のカノン」となっています。現在も議論や解釈の面で解決がついておらず、様々な演奏がされています。
数あるバッハの曲の中で一曲だけ選べと言われたらかなり苦労しますが、わたくしはこの「音楽の捧げもの」を選びます。とても美しく、崇高で、気高く気品に溢れる曲。バッハの上に書いたように、バッハの晩年の作品で、フーガの技法(BWV1080)と並んで、バッハがその作曲技法の限りを尽くした作品ですね。謎が多い曲ですが、その中に王の繁栄を盛り込み、聖書の言葉を巧みに盛り込んでいるところはさすがにバッハです。
クイケン兄弟は後に
「楽器の指定の解釈を誤っていた」
と言って録音をしなおしています。それも素晴らしいのですが、レオンハルト氏が参加しているこのCDを何度も聴いて馴染んでいるので、このCDを選びました。セオンはすでにありませんが、ソニーから同じCDが発売になっています(ただしジャケットは違います)。
演奏:
バルトルド・クイケン(フラウト・トラヴェルソ、G. A. ロッテンブルク(ブリュッセル)18世紀頃)
シギスヴァルト・クイケン(バロック・ヴァイオリン、マッジーニ派のヴァイオリン(ブレッシア)17世紀中頃)
マリー・レオンハルト(バロック・ヴァイオリン、ヤコブ・シュタイナー(アブサム)1676年)
ヴィーラント・クイケン(ヴィオラ・ダ・ガンバ、作者不明(チロル)18世紀)
ロベルト・コーネン(チェンバロ)
グスタフ・レオンハルト(独奏チェンバロ、指揮、J. D. ドゥルケン(アントワープ)1745年によるマルティン・スコヴロネック(ブレーメン製)、J. D. ドゥルケン(アントワープ)1755年)
(*チェンバロはレオンハルトとコーネンがいずれを使用したか不明)
録音:1974年11月、アムステルダム、ドーペスヅィンデ教会)

