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BWV846 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1番 ハ長調

2008年06月23日

「J. S. バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 BWV846-869」(グスタフ・レオンハルト、DHM、B18D-36015〜16)

成立:1720〜22年、ケーテン
基本資料:自筆清浄譜
ハ長調、プレリュード(4/4)、フーガ(4/4)

プレリュード;分散和音のみで構成されており、長三和音が美しく響きます。フリーデマンのための小曲集にこの曲を記譜した際には、後半部分は和音で記譜していました。グノーが歌声部をつけて「アヴェ・マリア」を作曲したことで知られます。
フーガ;ヘクサコード(6音音階)主題による4声楽曲。後半のストレッタ(主題の密接提示)が、全巻中もっとも多く、一つの間奏部もありません。

一般的に「平均律クラヴィーア曲集」と呼ばれる作品を今日から紹介していこうと思います。この曲は、ケーテン時代の後期に、家庭での教育活動から生み出された曲集。「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」が一つの母体になっています。「インヴェンションとシンフォニア」の上級編に相当します。24曲のプレリュードとフーガからなり、すべて異なる調で書かれていて、ハ長調からハ短調→嬰ハ長調→・・・・→ロ短調へと、長調と短調を交互にして、音階を上昇していきます。つまり、理論上考えられるすべての調が、一つの曲集にまとめられています。

自筆清浄譜の冒頭には、

うまく調律されたクラヴィーア(,,Das Wohltemperirte Clavier")、あるいは、長3度つまりドレミ、短3度つまりレミファにかかわるすべての全音と半音を用いたプレリュードとフーガ。音楽を学ぶ意欲のある若者たちの役に立つように、また、この勉強にすでに熟達した人たちには、格別の時のすさびになるように。現アンハルト=ケーテン宮廷楽長兼室内楽団監督、ヨーハン・セバスティアン・バッハが起草し、完成。1722年

と書かれています。

この曲集で常に問題となるのは、上で「一般的に」と書いた「平均律」という言葉ですね。明らかに現在でいう平均律はバッハよりも後年のものですから、それをバッハが想定して作曲したとは思えません。英語で「well-temtered」が「平均律」という単語になっているので、余計に混乱を招くのですが、ピタゴラス音律、純性律、中全音律(ミーントーン)などを用いた調律方法では、他の調、特に遠い調へ移った時に綺麗に響かないので、それを解消するために、キルンベルガーやヴェルクマイスターといった人達が様々な調律方法を編み出しました。バッハがどの調律方法を想定してこの曲集を書いたのかは未だに議論となっています。

彼はまたフリューゲルもクラヴィコードも、自分で調律した。そしてその仕事によく慣れていたので、15分以上もかかることは決してなかった。更にまた、彼が楽譜なしに心の趣くままに弾く時には、二十四の調をすべて自分のものにしていて、それらを思うように扱った。どんなに遠い調でも、ごく近い調のように、いかにも自然に結びつけた。人々は、彼がただ一つの調の目に見えない圏内で転調しているだけなのだ、思った。転調に際しての固さなど、彼のまったく知らないことであった。彼の半音階でさえ、依然として全音階の領域に留まっていると思われるくらいに、その移行が柔らかで、よどみがなかった。
バッハの生涯と芸術」(フォルケル著、柴田治三郎訳、岩波書店)

と書かれているように、バッハ自身が何か独自の調律方法を持っていた可能性も否定できません。数年前にバッハの調律方法が発見さたというニュースが流れましたが、これに基づいた録音がなされていないので、わたくしにはこの調律方法についてはなんとも言えません。

ただはっきりしているのが、バッハが「平均律」を想定していなかったこと、そして「うまく調律されたクラヴィーア」というところが意味しているのは、

「24すべての調がよどみなく綺麗に響くように、ある一つの調律方法でうまく調律された」

ということではないか、ということです。この議論については、「詩的CD評」さんの「バッハの「巧みに調律された鍵盤楽器のための24の前奏曲とフーガ第1集」をオリジナルのチェンバロで聴く」で詳しく書かれていますので、是非一読下さい。

演奏はやはりグスタフ・レオンハルト氏の見事な演奏から

演奏:グスタフ・レオンハルト
使用楽器:パスカル=タスカンのモデルによるデイヴィット・ルビオ製、オックスフォード、1972年)
録音:1972年&1973年、キルヒハイム、フッガー城、糸杉の間(ドイツ)

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コメント (2)
» 投稿者: ogawa_j

確かに「巧みに調律された鍵盤楽器のための前奏曲とフーガ第1巻」の自筆の表紙最上部に記入された装飾模様が、実は調律法を示している、という説が流布しているようですね。http://bach.tuning.googlepages.com/home このサイトでもその説明がされています。私は、この説の信憑性については、今のところ何とも言えません。一度この説をじっくり検討してみようとは思っているのですが・・・

» 投稿者: くらんべりぃ

コメントありがとうございます。

「等分平均律」を想定していないということは、今はある意味常識とされるようになっていますが、一番多く聞くのは、ヴェルクマイスターでなかったか?という説ですね。知り合いであったそうですし、彼の調律方法に沿って作っていると聞きますが、実際のところはバッハ本人に聞くしかないのでしょうね。

教えていただいたサイトを見てみましたが、確かにわたくしが挙げたサイトと同じく、その信憑性については、「なんとも言えない」というのは正直なところですね。ある程度信憑性があるのであれば、リフキン説のように、最近の声楽曲をこぞって少数で録音するという状態と同じになると思います。しかし実際はそれに沿った演奏、録音を耳にしていないので、演奏者の中でもそう簡単に取り入れることができないものなのでしょうね