BWV58 ああ神よ、いかに多き胸の悩み
「バッハ:カンタータ全集第3巻」(ニコラウス・アーノンクール、グスタフ・レオンハルト、TELDEC、WPCS-10913/8)
用途:新年後第1日曜日
初演:1727年1月5日、ライプツィヒ
書簡章句:ペテロの手紙一、4、12〜19
福音書章句:マタイによる福音書2、13〜23
歌詞;作者不詳。第1曲;M. モラーの同名コラール(1587)第1節(定旋律=BWV3)。第5曲;M. ベームのコラール「おおイエス・キリスト、わが命の光」(1610)第2節(定旋律=BWV3)
編成:ソプラノ、バス、合唱、オーボエ2、オーボエ・ダ・カッチャ、弦合奏、通奏低音
基本資料:自筆総譜。オリジナル・パート譜
構成:
第1曲:コラール(ソプラノ)とアリア(バス)(オーボエ2、オーボエ・ダ・カッチャ、弦合奏、通奏低音、アダージョ、ハ長調、3/4)
第2曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
第3曲:アリア(ソプラノ、ヴァイオリン・ソロ、通奏低音、ニ短調、4/4)
第4曲;レチタティーヴォ(ソプラノ、通奏低音)
第5曲;コラール(ソプラノ)とアリア(バス)(オーボエ2、オーボエ・ダ・カッチャ、弦合奏、通奏低音、ハ長調、2/4)
基本テキスト;
書簡章句:ペテロの手紙一、4、12〜19
◆キリスト者として苦しみを受ける
4:12 愛する人たち、あなたがたを試みるために身にふりかかる火のような試練を、何か思いがけないことが生じたかのように、驚き怪しんではなりません。
4:13 むしろ、キリストの苦しみにあずかればあずかるほど喜びなさい。それは、キリストの栄光が現れるときにも、喜びに満ちあふれるためです。
4:14 あなたがたはキリストの名のために非難されるなら、幸いです。栄光の霊、すなわち神の霊が、あなたがたの上にとどまってくださるからです。
4:15 あなたがたのうちだれも、人殺し、泥棒、悪者、あるいは、他人に干渉する者として、苦しみを受けることがないようにしなさい。
4:16 しかし、キリスト者として苦しみを受けるのなら、決して恥じてはなりません。むしろ、キリスト者の名で呼ばれることで、神をあがめなさい。
4:17 今こそ、神の家から裁きが始まる時です。わたしたちがまず裁きを受けるのだとすれば、神の福音に従わない者たちの行く末は、いったい、どんなものになるだろうか。
4:18 「正しい人がやっと救われるのなら、/不信心な人や罪深い人はどうなるのか」と言われているとおりです。
4:19 だから、神の御心によって苦しみを受ける人は、善い行いをし続けて、真実であられる創造主に自分の魂をゆだねなさい。
福音書章句:マタイによる福音書2、13〜23
◆エジプトに避難する
2:13 占星術の学者たちが帰って行くと、主の天使が夢でヨセフに現れて言った。「起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが、この子を探し出して殺そうとしている。」
2:14 ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、
2:15 ヘロデが死ぬまでそこにいた。それは、「わたしは、エジプトからわたしの子を呼び出した」と、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。
◆ヘロデ、子供を皆殺しにする
2:16 さて、ヘロデは占星術の学者たちにだまされたと知って、大いに怒った。そして、人を送り、学者たちに確かめておいた時期に基づいて、ベツレヘムとその周辺一帯にいた二歳以下の男の子を、一人残らず殺させた。
2:17 こうして、預言者エレミヤを通して言われていたことが実現した。
2:18 「ラマで声が聞こえた。激しく嘆き悲しむ声だ。ラケルは子供たちのことで泣き、/慰めてもらおうともしない、/子供たちがもういないから。」
◆エジプトから帰国する
2:19 ヘロデが死ぬと、主の天使がエジプトにいるヨセフに夢で現れて、
2:20 言った。「起きて、子供とその母親を連れ、イスラエルの地に行きなさい。この子の命をねらっていた者どもは、死んでしまった。」
2:21 そこで、ヨセフは起きて、幼子とその母を連れて、イスラエルの地へ帰って来た。
2:22 しかし、アルケラオが父ヘロデの跡を継いでユダヤを支配していると聞き、そこに行くことを恐れた。ところが、夢でお告げがあったので、ガリラヤ地方に引きこもり、
2:23 ナザレという町に行って住んだ。「彼はナザレの人と呼ばれる」と、預言者たちを通して言われていたことが実現するためであった。
BWV244マタイ受難曲の初演間近、1727年新年の作品。対話曲となっています。
親密な二重唱カンタータのひとつで、自筆総譜には「対話曲 Dialogus」の表記があり、曲の印象は、魂とイエスの対話によるカンタータに近い。現在演奏に用いられるのは、オーボエ・グループを加え、ソプラノ・アリアを新しい曲に差し替えた改訂稿である(1733年または34年)。
バッハ事典(東京書籍)
編成は小さいものの、引用にあるように、対話形式となっており、じっくりと聴かせる内容となっています。
第3曲の独奏ヴァイオリンを伴うソプラノ・アリアが、改訂時に差し替えられたもの。ソプラノの独唱ですが、ヴァイオリンと対話をしているような印象を受けます。美しいアリア。
われはわれを囲める悩みの中にても満り足れり
と始まり、短調の調べがその悩みを示すとともに、美しい旋律が満たされているという、キリスト者の心の充足を述べている感じを受けます。ヴァイオリンの調べも実に美しいです。
最後のコラールとアリアでは、それまでのゆったりした雰囲気とは一転して、非常に晴れやかな曲調へと変化します。ソプラノとバスの喜び溢れる掛け合いで曲を閉じます
演奏:
ソプラノ;ペーター・イェーロッジ(ウィーン少年合唱団員)
バス;リュート・ファン・デル・メール
合唱;ウィーン少年合唱団・ウィーン合唱隊(合唱指揮;ハンス・ギレスベルガー)
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
指揮:ニコラウス・アーノンクール
録音:1974−1975年

