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管弦楽組曲原典版を聴く

2009年06月13日

「J.S.バッハ:管弦楽組曲集(原典版)〜若き王子のための(アンハルト・ケーテン候レオポルト王子のために)」(モニカ・ハジェット、アンサンブル・ソネリー、Avie、AV2171)

バッハの「管弦楽組曲」としては、BWV1066 - 1070の4曲が知られています(BWV1071については、Ch. F. ペンツェルによる筆写パート譜が残っているものの、作者名に「バッハ」とだけ記されているため、バッハに近い人物によるもので、偽作と見なされています)。

バッハがこれらの「序曲」の創作にとりかかったのは、自らがオーケストラを指揮できる立場になってからであるとされており、その事情を考慮すると、ヴァイマール時代からケーテン時代がその創作の初期となります。いずれの曲もライプツィヒ時代の筆写譜で伝えられているものの、その創作に至る経緯や成立時代は明らかではありません。バッハ事典(東京書籍)によれば、

第1番(BWV1066);1725年頃、ライプツィヒ?(同時代の筆写パート譜)
第2番(BWV1067);1738/39年、ライプツィヒ(オリジナル・パート譜(一部自筆))
第3番(BWV1068);1731年春、ライプツィヒ(オリジナル・パート譜(一部自筆))
第4番(BWV1069);1725年以前(Ch. F. ペンツェルによる筆写パート譜)

となっています。いずれも完全な自筆譜が存在しないため、例えば第1番については、最初に書かれたもので、作品の成立自体はケーテンもしくはヴァイマール時代であると考えられています。第4番もバッハの死後に作成された筆写譜によって伝えられているのみで、BWV110番の冒頭に転用されていることから、1725年以前(ケーテンもしくはヴァイマール時代)に書かれたものと推測されています。

さて、今回紹介するハジェットらによる演奏は、

「原典版」

と銘打っています。「新たに自筆譜が発見され、それに従って演奏した」、というわけではありません。上に引用した成立事情・時期の推測をもとに、ケーテンのレオポルト候の宮廷楽団と同じ規模の編成を再現して、そこから「原典の響き」を甦らせようとしているのです。

現在一般に演奏される編成と比較してみます。

第1番(BWV1066);オーボエ2、ファゴット、弦合奏、通奏低音
第2番(BWV1067);フラウト・トラヴェルソ、弦合奏、通奏低音
第3番(BWV1068);トランペット3、ティンパニ、オーボエ2、弦合奏、通奏低音
第4番(BWV1069);トランペット3、ティンパニ、オーボエ3、ファゴット、弦合奏、チェロ、ヴィオローネ、通奏低音

ハジェットは、ケーテンの宮廷楽団の編成、

「弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)、オーボエ、ファゴット、チェンバロ」

に基づいて演奏しており、第2番では、フラウト・トラヴェルソのパートをオーボエに置き換え、第3、4番ではティンパニは登場しません。

実際に聴いてみた感じですが、第2番のオーボエによる演奏は、これまでフラウト・トラヴェルソでの演奏を「当たり前」として聴いてきたので、どこか違和感を感じるかな、と思ったのですが、杞憂でした。比較的しっくりと全体に馴染んでいます。演奏がかなり早めなのが気になったところでしょうか(普通はCD2枚組になるのですが、この録音は1枚ですからね)・・・。

この試みが正当なのか否かは不明ですが、違和感を覚えることもありませんし、当時の宮廷の事情を考慮した演奏ということで、ある意味面白いと思います

演奏;モニカ・ハジェット、アンサンブル・ソネリー
録音;2007年9月21〜25日、ロンドン、セント・サイラス教会
ピッチ;a' = 415 Hz

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コメント (2)
» 投稿者: ogawa_j

バロック時代の作品の演奏に、様々な試みがなされることは、良いことと思います。
 バッハの管弦楽組曲についても、今までにも例えば、DENONから出ている、ラ・ストラヴァガンツァによる第4番の演奏は、トランペット、ティンパニなしの編成です。これは、そのような写譜が存在するという裏付けがあり、トランペットとティンパニは、カンタータ110番に転用した際に加えられ、その後組曲にも反映させたという考えもあります。
 第2番のフラウト・トラベルソの代わりにオーボエというのは、実際に聴いてみなければ分かりませんが、何となく違和感があるような気がしますが・・・。
 それにしても、4曲でCD1枚というのは、繰り返しをすべて省略したとしても、よほどテンポが速いのでしょうか?

» 投稿者: くらんべりぃ

コメント有り難うございます。

ラ・ストラヴァガンツァのCDの解説に、ご指摘の内容が書かれていました。

オーボエの起用ですが、本文で触れていますが、個人的には大きな違和感を感じなかったのです。たしかにトラヴェルソとの音色の違いは大きいですが、オーボエだけが浮いてしまうということがないのです。

演奏ですが、かなり早いです。
第1番;20:33
第2番;17:45
第3番;17:20
第4番;17:31
となっています。

高速な演奏のムジカ・アンティクァ・ケルンの演奏と聴き比べてみましたが、その上をいっています。

ハジェットはこうした編成を考慮した演奏を楽しんでいるみたいですね。「音楽の捧げもの」でもかなり変わった編成でやっていましたから

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