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BWV1024 ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ハ短調(偽作?)

2009年12月05日
BachSchmittA008.jpg

「J. S. バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集」(エレーヌ・シュミット、Alpha 008)

成立:1714〜17年、ヴァイマール?
基本資料:同時代の筆写譜(ドレスデン)
楽章構成:
1. アダージョ、4/4
2. プレスト、2/2
3. アッフェットゥオーソ、変ホ長調、4/4
4. ヴィヴァーチェ、3/8

雨上がりの昼下がりに聴くのは、ピゼンデルの作品とされるもの。エレーヌ・シュミットの美しいバロック・ヴァイオリンで楽しみます。

原題「独奏ヴァイオリンとチェンバロの低音のためのソナタ」。教会ソナタに則った楽章構成をとり、保続低音上でのヴァイオリン・ソロで開曲される。筆写譜は、ドレースデン宮廷の名ヴァイオリニスト、J. G. ピゼンデル(1687-1755)が、1710年頃に作成したもの。19世紀にはバッハの作品と見なされていたが、近年では、筆写したピゼンデル自身の作品とみるのが通説。雄弁なヴァイオリン・パートと悲愴な美しさを備えた作品で、バッハに影響を与えた可能性も考えられる。
バッハ事典(東京書籍)

引用に、「雄弁なヴァイオリン・パートと悲愴な美しさ」とありますが、まさにその通りで、1曲目のアダージョは悲愴な感じを受けます。2曲目以降で、ヴァイオリンの「雄弁」さが始まります。第3楽章は長調に転じて、ゆったりとしたテンポの中、ヴァイオリンの美しさが光ります。4曲目で再び短調に戻り、ヴァイオリンが語ります。エレーヌ・シュミットの演奏の仕方とよく合っている曲ですね

演奏:
エレーヌ・シュミット(ヴァイオリン)
アラン・ジェールヴル(チェロ)
ヤン・ウィレム・ヤンセン(チェンバロ)
録音年月日不明

BWV1039 2本のフルートと通奏低音のためのソナタ ト長調

2009年05月02日

「J. S. バッハ:フルート.ソナタ全集」(バルトルド・クイケン、グスタフ・レオンハルト、DHM、BVCD-1639-40)

成立;遅くとも1726年頃、ライプツィヒ
基本資料;同時代の2人のコピストによる筆写パート譜
楽章構成;
第1楽章;アダージョ、12/8
第2楽章;アレグロ・マ・ノン・プレスト、3/4
第3楽章;アダージョ・エ・ピアノ、ホ短調、4/4
第4楽章;プレスト、2/2

以前紹介した「BWV1027 ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ 第1番 ト長調」と同一の音楽です。

2本のトラヴェルソが寄り添いながら、美しい旋律を奏でていきます。

演奏;
フラウト・トラヴェルソ;
バルトルド・クイケン(Alain Weemaels, 1986 after I. H. Rottenburgh Brüssel c. 1725)
マルク・アンタイ(Alain Weemaels, 1986 after I. H. Rottenburgh Brülsse c. 1725)

通奏低音;
ヴィーラント・クイケン(Nicolas Bertrand Paris c. 1700)
グスタフ・レオンハルト(Ted Diehl, 1983 after Christian Cell, Hamburg, 1728)

録音;
1988年6月27−30日、オランダ、ハーレム、ドープスヘヅィンデ教会

BWV1010 無伴奏チェロ組曲 第4番 変ホ長調

2009年02月28日
CelloSuitesS_Kuijken.jpg

「無伴奏チェロ組曲全曲 」(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ、シギスヴァルト・クイケン、ACCENT、ACC24196)

成立:1720年(最終稿)、ケーテン
基本資料:アンナ・マグダレーナ・バッハによる写筆譜(自筆譜は消失)
ブラウンシュヴァイ=ヴヴォルフェンビュッテツの音楽家、 G. H. L. シュヴァンベルクの求めに応じて作成
構成:
1. プレリュード(2/2)
2. アルマンド(4/4)
3. クーラント(3/4)
4. サラバンド(3/4)
5. ブーレーI(2/2)
6. ブーレーII(2/2)
7. ジーグ(12/8)

変ホ長調をとるこの組曲で、異なった響きの世界が始まる。この調整では開放弦の使用が制限されるため、響きはおのずから渋く、やわらかである。しかし音楽的には静と動の楽想が巧みに対比されているため、単調には陥っていない。
バッハ事典(東京書籍)

「無伴奏チェロ組曲 第4番」を、シギスヴァルト・クイケンのヴィオロンチェロ・ダ・スパッラによる演奏で楽しみます。この楽器については、「ヴィオロン・チェロ・スパッラによる無伴奏チェロ組曲を聴く」で紹介しています。シギスヴァルト・クイケンは、ヴィヴァルディの指揮でも、この曲を使っています(ACCENT, ACC 24179)。以前寺神戸亮氏の演奏のところでも触れましたが、チェロとは違った響きで、これまで愛聴してきたバッロク・チェロによる演奏とは印象が異なります。

このCDでシギスヴァルト・クイケンがヴィオロン・チェロ・スパッラを持っている写真が、先日「La Petite Bande存続の危機」のところでリンクした先(http://www.savelapetitebande.com/index.php?l=en)に載っています。2004年頃からこの楽器を使い始めているようで、満を持しての録音ということでしょうか・・・

引用にあるように、静と動がうまく対比されている組曲です。静の部分ではじっくりと聴かせ、動の部分では比較的動きがあります。細かい音の連続があったりと、変化に飛んでいます。クーラントのアグレッシヴな音の連続は、かなり演奏が困難なように感じます。それと対比するように、非常にゆったりとしたテンポで進むサラバンドは実に美しい。毎回この曲集を聴く度に、一挺のチェロの究極の世界が目の前に広がっていると感じます

演奏:シギスヴァルト・クイケン
使用楽器:ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(ドミトリー・パディアロフ、2005年)
録音:2006年12月4-7日、2007年12月26-30日、Galaxy-Studios Mol (Belgium)、エッヒング(バヴァリア)

BWV1023 ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ短調

2009年01月24日
BachSchmittA008.jpg

「J. S. バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集」(エレーヌ・シュミット、Alpha 008)

成立:1714〜17年、ヴァイマール?
基本資料:同時代の筆写譜(ドレスデン)
楽章構成:
1. (テンポ指定なし)、4/4
2. アダージョ・マ・ノン・タント、3/4
3. アルマンド、4/4
4. ジーグ、12/8

このソナタは、ドレースデン宮廷のコピストによる、1720年代の筆写譜で伝えられている(これは、ザクセン選帝侯の宮廷音楽家たちとバッハの間に、さかんな交流があったことの証拠である)。曲は一応4つの楽章で書かれているが、構成は変則的。最初の楽章は、通奏低音の保続音(オルゲルプンクト)の上でヴァイオリンが華々しい技巧句を演奏するという、オルガントッカータそのままの音楽である。これにはパトスに満ちた緩徐章が続いて、おき補いを形成する。こうした対比的な配列は、ヴァイマル時代初期のチェンバロ用トッカータによく見られるものである。こうした特徴、および前述したドレスデンとの関連から、H. フォークトは、このソナタが1714年〜17年頃にヴァイマルで成立したとする。だとすれば、現存するバッハのソナタ中、これが最初の作品ということになる。
バッハ事典(東京書籍)

第1楽章が実に印象的な曲。引用にあるように、通奏低音の保続音の上でヴァイオリンが物哀しい旋律を奏でます。たしかにオルガン用トッカータそのものという感じです。かなり技巧的な曲です。

エレーヌ・シュミットの美しいバロック・ヴァイオリンの音色が魅力的です

演奏:
エレーヌ・シュミット(ヴァイオリン)
アラン・ジェールヴル(チェロ)
ヤン・ウィレム・ヤンセン(チェンバロ)
録音年月日不明

BWV1009 無伴奏チェロ組曲 第3番 ハ長調

2009年01月10日

「バッハ:無伴奏チェロ組曲(全集)」(アンナー・ビルスマ、SEON, B18D-38001-02)

成立:1720年(最終稿)、ケーテン
基本資料:アンナ・マグダレーナ・バッハによる写筆譜(自筆譜は消失)
ブラウンシュヴァイ=ヴヴォルフェンビュッテツの音楽家、 G. H. L. シュヴァンベルクの求めに応じて作成
構成:
1. プレリュード(3/4)
2. アルマンド(4/4)
3. クーラント(3/4)
4. サラバンド(3/4)
5. ブーレーI(2/2)
6. ブーレーII、ハ短調(2/2)
7. ジーグ(3/8)

6曲中もっとも有名な作品。広い音域をいっぱいに使い、曲想は明朗で、楽章間のバランスもよい。その演奏効果の高さは、低いハ音を開放弦で鳴らすことができること、4声和音が弾きやすいことといった、ハ長調の特性とも関連している。
バッハ事典(東京書籍)

一挺のチェロがここまで幅広く演奏できるかということを実感できる作品。豪快なプレリュードは印象的。曲全体を通して、明るい曲調が印象的

演奏:アンナー・ビルスマ
使用楽器:バロック・チェロ(マッティオ・ゴッフリラー、ヴェネツィア、1669年)
録音:1979年4月、5月、ランツフート、エッヒング(バヴァリア)

BWV1030 オブリガート・チェンバロとフルートのためのソナタ ロ短調

2008年12月13日

「バッハ:フルート・ソナタ全集」(ブリュッヘン、SEON、B18D-38006-07)

成立:1736 / 37年、ライプツィヒ
基本資料:自筆総譜とオリジナル・パート譜
楽章構成:
第1楽章. アンダンテ、4/4
第2楽章. ラルゴ・エ・ドルチェ、ニ長調、6/8
第3楽章. プレスト、2/2 - 12/16

まさしく名曲。トラヴェルソの持つ音、雰囲気を存分に発揮させた楽曲です。

1736 / 37年頃の自筆総譜によって伝えられるが、成立は、さらに以前と思われる。別にト短調のチェンバロ・パート譜(作成はバッハの死後)が存在すること、自筆総譜に移調の際と思われる3度音程の書き誤りが散見されることから、初稿は(オーボエ用として?)ト短調で書かれていた可能性が高い。
バッハ事典(東京書籍)

第1楽章は、バッハの書いたソナタの中でも相当長いものとなっています(119小節)。トラヴェルソとチェンバロの右手と左手の間で模倣が行われます。
第2楽章では、チェンバロが伴奏に回る形となりますが、トラヴェルソに寄り添い、トラヴェルソの演奏を引き立てます。
第3楽章は、プレストとアレグロの2つから成っています。ブレストは3声フーガで、主題が、トラヴェルソ、チェンバロの右手、左手の順に提示されます。ついで、主題が、トラヴェルソの属調からチェンバロの左手の下属調、右手の主調の順で展開します。アレグロはジーグのリズムで快活な曲調。

ジャケットに載っているのが、この曲の自筆譜です。

演奏は、この上ない二人、ブリュッヘンとレオンハルトによるもの

演奏;
フランス・ブリュッヘン;フラウト・トラヴェルソ(I. シェラー(南ドイツまたはフランス)1733年)
グスタフ・レオンハルト;チェンバロ(マルティン・スコヴロネック(ブレーメン)1974年、フレンチ・スタイルの楽器)

録音;
1975年2月、アムステルダム、ドープスヅィデ教会およびハーレム

クイケン・レオンハルトによるヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ集を聴く

2008年12月04日

「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ集(全6曲)」(シギスヴァルト・クイケン、グスタフ・レオンハルト、DHM、DVCD-1636-37)

ねむり猫のバッハ日記」さんの「ムローヴァ/ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ集」を読んでいて、久しぶりに聴いてみたくなったので、CD棚から選んできました。

誰の演奏にしようかなと悩んだのですが、はやりこの二人のコンビが最強かなということと、この曲集の中でもっとも繰り返し聴いているものなので、クイケン・レオンハルト盤を選びました。

この6つの曲からなる曲集(BWV1014〜19)ですが、以前触れたように、実にいい曲ばかりなのですが、バッハの曲の中ではなぜだかあまり取り上げられませんね。チェンバロが通奏低音ではなくオブリガートで入っていて、ヴァイオリンとの掛け合いが絶妙なのですが・・・。

演奏速度も、今の時流に乗った早いものではなく、ゆったりとじっくりと聴かせてくれます。このところ浮気をしてポッジャー・ピノック盤を聴くことが多かったのですが(ポッジャーのヴァイオリンの音色は実に美しいですからね)、改めて聴いてみると、クイケンの素朴な音作りはやはりよいですね。この人からバロック・ヴァイオリンにはいったので、彼の演奏を聴くと落ち着きます。レオンハルトについては、言うことはありません。来年来日されるので、それが楽しみです。

なおレオンハルトは、ラールス・フリデンともこれよりも前に、同じ曲集の全曲録音を行っています。かなり古い録音なので、入手可能かはわかりませんが、今年発売になった「グスタフ・レオンハルト・エディション(21CD)」に含まれています


演奏;
シギスヴァルト・クイケン(バロック・ヴァイオリン=マッジーニ派、17世紀)
グスタフ・レオンハルト(チェンバロ、J. D. ドゥルケンのモデル(1745年、アントワープ)によるマルティン・スコヴロネク製(ブレーメン、1962年))

録音;
1973年6月13日、オランダ、アメロンゲン城

ヴィオロン・チェロ・スパッラによる無伴奏チェロ組曲を聴く

2008年06月28日

「J. S. バッハ:無伴奏チェロ組曲(全6曲)」(寺神戸亮、ヴィオロン・チェロ・スパッラ、DENON、COGQ-32-3)

「無伴奏チェロ組曲( BWV1007−1012)」は、チェロを演奏する人達の一つの到達点となっています。カザルスの歴史的な録音に始まり、古楽器の演奏ではアンアー・ビルスマの決定的な名盤があります。
さて、最近この曲を演奏するのに、新しい試みがなされています。それが今回紹介する「ヴィオロン・チェロ・スパッラ」です。フォルケルは、バッハの著書の中に、

「『チェロ独奏のための6つの組曲』(但し組曲第6はヴィオラ・ポンポーザのためのもの)」

と記載しています。
この楽器自体が残っていないため、実際どんな楽器であったのかは謎ですが、この数年でその再現が試みられてきました。この楽器の試作ですが、日本に在住しているドミトリー・パディアロフ氏がそれを行っています。この楽器は、ストラップをつけて肩からつって演奏します。小型のチェロですが、それでもかなり大きいですね。この楽器はすでに、シギスヴァルト・クイケンがACCENTで進めているカンタータ集でも使っていますし、同レーベルでリリースしたヴィヴァルディの「四季」でも演奏しています。この楽器の詳細については、寺神戸亮氏のブログの中で紹介されていますので、そちらを参照してください。

さて、ヴァイオリン奏者がバッハの無伴奏チェロ組曲を演奏するというのは、一見かわった印象を受けます。実際に聴いていると、はやりチェロとは響きが異なりますね。このCDを聴いた印象は、寺神戸亮氏のキレのあるヴァイオリンの演奏が、そのままヴィオロン・チェロ・スパッラに乗り移った感じです。実にキレがあって、アグレッシブな演奏と感じました。

なお第6番は、5弦チェロ用ですが、ここでは4弦にも5弦にも対応できように制作されたヴィオロン・チェロ・スパッラを用いていて、第6番のみ5弦で演奏されています。

演奏:寺神戸亮
使用楽器:ヴィオロン・チェロ・スパッラ(ドミトリー・パディアロフ、2005年、ブリュッセル)、弓;Mashiko, Isao (2003年、千葉)
ピッチ:a≒415
録音:2008年2月5〜7日、18〜19日、東京、Hakujuホール

BWV1015 オブリガート・チェンバロとヴァイオリンのための6つのソナタ 第2番 イ長調

2008年06月08日

演奏:
ヴァイオリン:アンドルー・マンゼ
チェンバロ:リチャード・エガー
演奏場所:2008年6月8日、兵庫県立芸術文化センター 小ホール

成立:1720年頃、ケーテン(?)、最終稿はライプツィヒ時代(1724〜27年)に改訂
基本資料:同時代の写筆パート譜(一部バッハの自筆)、J. Ch. アルトニコルによる写筆譜
楽章編成:
第1楽章:(テンポ指定なし)ドルチェ 6/8
第2楽章:アレグロ 6/8
第3楽章:アンダンテ・ウン・ポーコ 嬰へ短調 4/4
第4楽章:プレスト 2/2

「オブリガート・チェンバロとヴァイオリンのための6つのソナタ(BWV1014〜1019)」からの一曲。今日はアンドルー・マンゼとリチャード・エガーのコンサートから。

優しいヴァイオリンの旋律で始まる第1楽章。第2楽章は協奏曲風の快活なフーガで、ヴァイオリンとチェンバロがそれぞれ寄り添いながら、美しい旋律を奏でます。第3楽章は、哀愁を帯びた楽章で、ヴァイオリンとチェンバロの右手がカノンを織りなします。第4楽章は、再び快活で華やかな曲調に戻ります。トリオ書法で書かれています。

マンゼのヴァイオリンというと、「魔性」というイメージがあったのですが、この曲を聴く限りでは、実に繊細でした。長年一緒に録音してきたエガーとの相性は抜群で、何度もアイコンタクトを取りながら、演奏していました。コンサートで演奏しているという何か構えたところを微塵も感じさせず、「ちょっと演奏してみようか」という感じで、二人の演奏している姿を見ているだけでも、実に微笑ましく感じました。
マンゼの演奏ですが、意外にヴィヴラートをよく使っていました。ただモダンの奏者のように常に使っているのではなく、伸ばす音の一番最後に軽く入れるという感じです。緩急の使い分け方が絶妙で、また音も実に美しかったです。

なお、この曲(ソナタ集すべて)は、下のCDで聴くことができます。
「BACH VIOLIN SONATAS」(Andrew Manze, Richard Egarr, Jaap ter Linden, harmonia mundi, FRANCE, HMU 907250.51)

なおこのCDでは、通常ヴァイオリンとチェンバロのみで演奏されますが、ヴィオラ・ダ・ガンバもしくはチェロを加えて演奏しています。これは彼らの勝手な解釈ではなく、ヨハン・ハインリヒ・バッハの手によるパート譜に、

「協奏的チェンバロとヴァイオリン・ソロのための6つのソナタ、ヴィオラ・ダ・ガンバの低音部付き」

とあることに由来しています。

今回のコンサートのプログラムは以下の通りです。

・J.S.バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第2番 イ長調 BWV1015

・コレルリ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ 第7番 ニ短調 op.5

・J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻より第8番 変ホ長調 BWV853 <チェンバロ・ソロ>

・パンドルフィ:ヴァイオリン・ソナタ集作品3より 第2番ラ・チェスタ&第6番ラ・サッバティーナ

休憩

・ビーバー:ロザリオのソナタ第1番「受胎告知」

・J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903<チェンバロ・ソロ>

・ビーバー:8つのヴァイオリン・ソナタより 第3番

アンコール:
1回目:ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 第1楽章

2回目:J. S. バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 第6番 ト長調 BWV1019よりアレグロ

昨日はエレーヌ・シュミットからヴァイオリン一挺の世界を堪能させてもらい、今日はヴァイオリンとチェンバロの二つの楽器の世界を堪能させてもらいました。ホールの大きさ的に調度いい曲の構成だったと思います。

例によって終わった後にサイン会があって、サインを頂いてきました。

余談ですが、少し前に発売になったリチャード・エガーの平均律クラヴィーア曲集第1巻(Harmonia Mundi、HMU907431)がすごくよくて、早く第2巻を聴きたいと思っていました。それでサインを頂いた時に、第2巻の録音はもうすみましたか?と聞いたところ、「去年にすんだよ。いつ発売になるかわからないけど、すぐにリリースされると思うので、楽しみにしていて」とのことでした。

コンサートについては、「アンドルー・マンゼ&リチャード・エガー デュオ・リサイタル」にレポートを書いていますので、興味のある方はどうぞ

BWV1004 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調

2008年06月07日

演奏:エレーヌ.シュミット
演奏場所:2008年6月7日、兵庫県立芸術文化センター 小ホール
使用楽器:カミッロ・カミッリ(18世紀初頭)

成立:1720年(最終稿)、ケーテン
基本資料:自筆譜、アンナ・マクダレーナによる筆写譜
楽章構成:
第1楽章:アッレマンダ(アルマンド)、4/4
第2楽章:コルレンテ(クーラント)、3/4
第3楽章:サラダンダ(サラバンド)、3/4
第4楽章:ジガ(ジーグ)、12/8
第5楽章:チャッコーナ(シャコンヌ)、3/4

ヴァイオリンを演奏する人達にとっての究極の到達点となるバッハの「通奏低音伴奏なしの6つのヴァイオリン独奏曲(無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ、BWV1001〜1006)」から、今日はエレーヌ・シュミットのコンサートで演奏された一曲を紹介します。

初めの4つの楽章は、重音奏法もほとんど用いずに、短く簡素に書かれている。それだけに、その全体と優に匹敵する規模をもつシャコンヌが。際立った印象を与える。バッハは、低音の主題に基づいて立体的な技法をヴァイオリンに取り込み(先例としてはビーバーの《パッサカリア》がある)、4小節の主題から、34の多彩な変奏を引き出した。全体は大きく3つの部分からなり、中間部はニ長調に転じる。
バッハ事典(東京書籍)

この曲のハイライトはもちろん最後の楽章の「シャコンヌ」でしょう。この「無伴奏ヴァイオリンのための3つのソナタと3つのパルティータ(BWV1001〜1006)」の自筆譜を見ながら、CDを聴いていると、「本当に一人の人間が創造したものなのだろうか?」という疑問が沸き起こってきます。

その自筆譜の表紙が上の画像です。そして有名なシャコンヌの冒頭部分が下になります。

一般に「シャコンヌ」とよく記載されますが、実際の楽譜にはいずれの楽章もイタリア語で書かれており、「チャッコーナ」となっています。

楽譜を見ながらCDを聴くだけでも大きな感動が得られますが、実際の演奏を体験すると、いかにこの曲が究極であるのかがよくわかります。この曲はコンサートの最後を飾ったのですが、その後のアンコールに出てきた彼女は、

「シャコンヌを演奏すると、体力をひどく消耗するのですが、今日は日本での最後のコンサートですので・・・」

と息を切らしながらアンコールの曲を始めました。肉体的にも精神的にも相当に奏者に負担をかける曲なのでしょう。

わずか一挺のヴァイオリンがここまですごい旋律を奏でるのか、と本当に感動しました。

今回の演奏曲目は、

無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 BWV1003

無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ホ長調 BWV1006

無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004

でした。彼女の演奏は語るように演奏するという表現が一番いいかと思います。楽譜を通してバッハと対話をしながらじっくりと聴かせてくれる演奏です。彼女の「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」は、αーレーベルから発売されていて、

「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番・パルティータ第1・2番」(Alpha082)

「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番・第3番・パルティータ第3番」(Alpha090)

で聴くことができます。この二枚は本当に名演なので是非聴いて下さい。そしてできれば自筆譜を入手して、それを見ながら聴いて下さい。これ以外にも同レーベルに録音した彼女の演奏はいずれも実に優れたものなので、どれも必聴と言っても過言ではないでしょう

コンサート後にサイン会があって、サインを頂いてきましたが、とても気さくでキュートな方でした。サインを求めた一人一人とじっくりと話しをして下さりました。

サインを頂く機会がこのところ結構あるのですが、サインにハートマークを書いたクラシックの演奏家は彼女がはじめてです。

コンサートの詳しい内容は「素晴らしき古楽の世界」の「古楽の愉しみ−魅惑のヴァイオリン・ウィーク−バッハ無伴奏ヴァイオリン エレーヌ・シュミット」に記事を書いていますので、興味がある方はどうぞ

BWV1008 無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調

2008年04月29日
CelloSuitesLindenBrilliant.jpg

「Bach Cello Suites」(Jaap ter Linden、BRILLIANT、93132)

成立:1720年(最終稿)、ケーテン
基本資料:アンナ・マグダレーナ・バッハによる写筆譜(自筆譜は消失)
ブラウンシュヴァイ=ヴヴォルフェンビュッテツの音楽家、 G. H. L. シュヴァンベルクの求めに応じて作成
構成:
1. プレリュード(3/4)
2. アルマンド(4/4)
3. クーラント(3/4)
4. サラバンド(3/4)
5. メヌエットI(3/4)
6. メヌエットII(ニ長調、3/4)
7. ジーグ(6/8)

内面的な情感をたたえた佳曲である。プレリュードは全曲と異なり旋律のなめらかな動きを特徴とするが、そこにも豊かなポリフォニーが内在している。その効果のカギを握るのは、数多く記入されたアーティキュレーションである。同じことはアルマンドとクーラントにもあてはまる。
バッハ事典(東京書籍)

チェロ一挺だけですが、「深さ」を感じます。ちょうど夜中に聴いていますが、低音の響きが夜の静けさの中でじっくりと聴くに相応しいと感じさせます。しかし静けさの中にでも、上の引用に書かれているように旋律が躍動的に動きます。チェロの存在的な魅力を最大限まで引き出した曲と言えますね

演奏:ヤープ・テル・リンデン
使用楽器:Giovanni Grancino, Milano, 1703
録音:2006年6月、Remonstrantse Kerk Deventer, Netherland

BWV1028 ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ 第2番 ニ長調

2008年03月28日

「J. S. バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバとハープシコードのためのソナタ集」(アーポ・ハッキネン、ミッコ・ペルコラ、NAXOS、8.570210)

基本資料:Ch. F. ペンツェルによる筆写パート譜(1753年)
楽章構成:
第1楽章:アダージョ、3/4
第2楽章:アレグロ、2/4
第3楽章:アンダンテ、ロ短調、12/8
第4楽章:アレグロ、6/8

低音A線を加えた7弦のヴィオラ・ダ・ガンバ用の作品。第1番(BWV1027)と同じように、緩ー急ー緩ー急の教会ソナタ風で構成されています。

瞑想的な美しさをたたえる第1楽章は、上2声の対話で進行、属和音に終止する。第2楽章はシンコペーション主題による活発な音楽。ロ短調の第3楽章では、息の長い装飾旋律が歌い継がれてゆく。協奏曲的な構成によるフィナーレは開放的な明るさに溢れ、ガンバのヴィルトゥオーソな技巧が披露される。
「バッハ事典(東京書籍)」

最近ナクソスから発売されたCDからの一曲ですが、実に落ち着いた演奏で、一発で気に入ってしまいました。若い演奏家達なので、早いテンポかとおもいきや、実にゆっくりとしていて、貫禄充分な演奏です。これは本当に掘り出し物という感じ。ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ(全曲)以外に、オルガン用のトリオ・ソナタ(BWV583、584)、クラヴィーア用のソナタ(BWV967、963)も収録されています。

演奏:
アーポ・ハッキネン(チェンバロ)
ミッコ・ペルコラ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

使用楽器:
ヴィオラ・ダ・ガンバ:Guy Harrison, Toronto, 1998, after Michel Colichon, Paris, 1691
チェンバロ:Joel Katzman, Amsterdam, 2002, after Padcal Taskin, Paris, 1769

録音:
St. Peter's Church, Siuntio, Finland, 2006年10月15日〜17日

ピッチ、音律;
Pitch : A = 403 Hz ; Temperament : Sorge, 1758

BWV1026 ヴァイオリンと通奏低音のためのフーガ ト短調

2008年03月11日
BachSchmittA008.jpg

「J. S. バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集」(エレーヌ・シュミット、Alpha 008)

成立:1710年頃、ヴァイマール?
基本資料:J. G. ヴァルターによる筆写譜
構成:単一楽章フーガ、アレグロ、ト短調、2/2

バッハの友人のオルガニスト、ヨハン・ゴットフリート・ヴァルターの手書きの写本の中から見つかった作品で、バッハの最初期の室内楽と思われています。

重音が多用されていて、極めて難しい運指(バッハの作品に関しては、この曲に限りませんが)が求められます。単一楽章から成っていますが、実に変化に飛んでいます。

CDのライナーノーツによれば、この頃バッハは、ヴァイオリニスト、ピゼンデルと出会っていて、生涯に渡って交遊があり、1716年出版のピゼンデルの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ イ短調」にバッハが直接影響を受けたことは充分考えられる、とされています。音楽に貪欲であったバッハのことですから、多いに触発されたのかもしれません。

演奏は大好きなヴァイオリニスト、エレーヌ・シュミットによるもの。彼女の演奏は、うまいというだけでなく、「語る」ように演奏するところに特徴があると思います。音も艶やかです。このCDはバッハのヴァイオリン作品の中でも、「偽作」の疑いが強いものが多く収録されている点も面白いですね。
彼女は「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」も同じAlphaレーベルに録音していますが、これも絶品。昨年同レーベルで発売されたシュメルツァーの作品集もさすがでしたね。シギスヴァルト・クイケンを除けば、一押しのヴァイオリニストです。今年6月の来日が楽しみです。

AlphaレーベルのCDは、彼女のものに限らずどれも素晴らしいものが多く、お勧めです。ジャケットデザインもいいですし、録音の仕方も「つぼ」を心得たという感じです

演奏:
エレーヌ・シュミット(ヴァイオリン)
アラン・ジェールヴル(チェロ)
ヤン・ウィレム・ヤンセン(チェンバロ)
録音年月日不明

BWV1027 ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ 第1番 ト長調

2008年02月11日

「J. S. バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ全集」(W. クイケン、レオンハルト、DHM、BVCD-1638)

成立:1742年頃作成
楽章構成:
第1楽章:アダージョ:12/8
第2楽章:アレグロ・マ・ノン・タント 3/4
第3楽章:アンダンテ ホ短調 4/4
第4楽章:アレグロ・モデラート 2/2

緩ー急ー緩ー急の教会ソナタ風で構成。「2本のフルートと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV1039」と同一の曲。ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの右手の二つの独奏パートと、チェンバロの左手の低音旋律パートからなっていて、トリオ・ソナタ風です。1039の第2フルートがヴィオア・ダ・ガンバ、第1フルートがチェンバロの右手に対応しています。

第1楽章は、ガンバとチェンバロの右手のパートが仲良く寄り添っているという印象で、のどかでいて美しい曲。第2楽章でテンポがアップしていきますが、第1楽章ののどかさが残ります。第3楽章でテンポを落として短いフレーズが繰り返し演奏されます。第4楽章は、壮大なフーガ。この部分は、「オルガンのためのトリオ・ソナタ BWV1027a」に転用されています。

演奏は、これ以上ない極上のお二人で。現在のガンバの最高峰の一人ヴィーラント・クイケン(もう一人はジョルディ・サヴァール)と、現代のバッハグスタフ・レオンハルト。

演奏:
ヴィオラ・ダ・ガンバ:ヴィーラント・クイケン(作者不詳、18世紀南ドイツ)
チェンバロ:グスタフ・レオンハルト(マルティン・スコヴロネック製、ブレーメン1962、J. D. ドゥルケン・モデル、アントワープ、1745年)

BWV1019 オブリガート・チェンバロとヴァイオリンのための6つのソナタ 第6番 ト長調

2008年02月05日

「The Complete Sonatas for Violin and Oblbligato Harpsichord」(Trevor Pinnock, Racgel Podger, CHANNEL CLASSICS, CCS 14798)

成立:1720年頃、ケーテン(?)、最終稿はライプツィヒ時代(1724〜27年)に改訂
基本資料:同時代の写筆パート譜(一部バッハの自筆)、J. Ch. アルトニコルによる写筆譜
楽章編成:
第1楽章:アレグロ 4/4
第2楽章:ラルゴ ホ短調 3/4
第3楽章:アレグロ ホ短調 4/4
第4楽章:アダージョ ロ短調 4/4
第5楽章:アレグロ 6/8

「オブリガート・チェンバロとヴァイオリンのための6つのソナタ(BWV1014〜1019)」からの一曲。第1番から第5番までは、教会ソナタ形式に基づいていますが、この第6番のみは5楽章あって、第3楽章にチェンバロ・ソロが入ります。
これは、他の5つのソナタよりも先に作曲され、何度かの改訂の後に、このソナタに組み込まれたためと言われています。初期稿、第2稿はBWV1019a(このCDに収録)。

第1楽章は非常に快活、第2楽章は哀愁を帯びていて、第3楽章は対位法を盛り込んだチェンバロの力強い独奏、第4楽章は哀愁を帯びた曲、最後の第5楽章はまた第1楽章のように快活な曲。

タイトルの通り、チェンバロは通奏低音ではなく、オブリガートであって、ヴァイオリンとチェンバロの右手、左手を合わせて、トリオ・ソナタのようになっています。


今日は若手の中でも好きなヴァイオリニストの一人、ポッジャーを聴きたくてこのCDを選びました。音が実に綺麗ですね。同じレーベルから出ているテレマンの無伴奏ヴァイオリンのための幻想曲でも、実にいい音を聴かせてくれます。特に第1楽章は、彼女らしい演奏だと思います。

この曲集ですが、実にいい曲揃いで好きなのですが、あまりバッハの曲の中では取り上げれませんね。なぜなのでしょうね?好きな曲集なので、古楽器で演奏されたものであれば、できるだけ買って聴いています。

最近のCDで嬉しいのは、上で述べたように、初期稿が収録されていたりすることですね。バッハがどうのように、推敲、改訂したのかがわかって面白いです。
ブランデンブルク協奏曲の第5番の初期稿(第1楽章のカデンツァが短い)も、比較的最近録音されるようになりましたし、こういうのは中々面白い企画だと思います(バッハ自身が、どう感じるのかは別ですが・・・)

また下のクレジットのように、ピッチもしっかりと書いてくれるといいですね。場合によっては、音律も書かれているものもありますからね。

演奏:
ヴァイオリン:レイチェル・ポッジャー(Pesarinius, Genoa, 1739)
チェンバロ:トレヴァー・ピノック(David J. Way, 1982 after Hemsch)
ピッチ:a' = 415
録音:2000年6月、8月(St. Martin's Church, East Woodhay, UK)

BWV1013 無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調

2008年02月02日

成立:1724年、ライプツィヒ(?)
楽章編成:
第1楽章:アルマンド(4/4)
第2楽章:コレンテ(3/4)
第3楽章:サラバンド(3/4)
第4楽章:ブレー・アングレース(2/4)

現在知られている唯一のバッハの無伴奏フルート曲。写筆譜のタイトルには、

Solo pour la Flute traversiere(横型フルートのためのソロ)

と記載されています。4つの舞曲を組曲風に連ねたものですが、通常組曲の最後にあるばずのジーグがありません。
とにかくものすごい超絶技巧を要する曲。
第1楽章のアルマンドは休符がない16分音符音型の連続で、フルートの音域を目一杯使って縦横無尽という感じで駆け巡ります。最後の音はトラヴェルソで一番高い音で終わります。
第2楽章のコレンテ(クーラント)は、凝った多彩な音型がたくさん現れます。
第3楽章のサラバンドは打って変わって、しっとりと
第4楽章はスピードを上げて、躍動感のある軽快に
という感じの4つの組曲からなっています。

演奏:バルトルド・クイケン(フラウト・トラヴェルソ)
演奏場所:兵庫県立芸術文化センター 小ホール

最初の画像の通り、今日はCDではなく、コンサートで聴いてきた生演奏から。

上に書きましたが、超絶技巧を必要とする曲。CDで聴いていてわかりますが、実際に演奏しているバルトルド・クイケン氏を見ていると、それがとてもつもなく凄まじいことがわかります。
ところが、それを難なく演奏するところも、バルトルド氏のものすごいところ。第1楽章のアルマンドを楽々と吹いている姿を見て、唖然としました。そして深く暖かみのある音。CDも素晴らしいですが、実際の演奏を聴くと、そのすごさが倍増しますね。

超絶技巧と書きましたが、バッハは演奏するのが非常に困難な曲が多いのに(泣きそうになるくらい)、かつ音楽として非常に美しいのです。パガニーニのカプリースや、リストの超絶技巧練習曲などは、テクニカルな面ですごいと思いますが、メロディーが美しいとはわたくしは思いません。しかしバッハは困難であるだけでなく、曲自体が極限まで素晴らしいのです。

さて、今日のコンサートですが、

「バルトルド・クイケン〜フルートとチェンバロによるバッハの調べ〜」

フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV1034

フランス組曲 第5番 ト長調 BWV817

フルートと通奏低音のためのソナタ ホ長調 BWV1035

(休憩)

無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013

フルートとチェンバロのためのソナタ ロ短調 BWV1030

アンコール1回目:
オブリガートチェンバロとフルートのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031 よりシチリアーノ

アンコール2回目:
フルートと通奏低音のためのソナタ ハ長調 BWV1033 よりメヌエット

フラウト・トラヴェルソ:バルトルド・クイケン
チェンバロ:エーヴァルト・デメイエル

というプログラム。アンコールの2曲は偽作(もしくはその疑いが強い)とされているもので、演奏はしないかな?と思っていたのですが、有名なシチリアーノなので、アンコールで出てきましたね。

今日は休憩後、最初に演奏された無伴奏フルート曲を紹介しましたが、ちょっとしたアクシデントが。観客席の照明が落ちて、ステージにトラヴェルソを持って一人で現れたバルトルド氏。しばらくステージの上を歩いた後、突然両手の親指と人差し指で丸い形を二つ作り、両目に。

メガネをお忘れに・・・。

笑いが起きました。しばらくして無事にメガネを持って再登場。また笑いが。そしていきなりの超絶技巧のフレーズでした。

以前にクイケン・アンサンブルのコンサートに行った時、アンコールの曲の時にもアクシデントがありました。チェロのヴィーラントが楽譜を見失ったらしく、メンバーが集まって全員で楽譜探しを始めたことがありました。クイケン家にはものを忘れる遺伝子があるのでしょうか?

コンサート終了後、サイン会があったので、お二人のサインを頂きました。

とても素直なわたくし。サインを頂く際に、素晴らしいステージを有り難うございました、と言った後に、「メガネをお忘れないように・・・」と言いました。

「Thank you.」

とにこやかにこたえて下さいました。

いい想い出がまた一つできましたね

080202_4.JPG

かなり手ぶれしてしまいました・・・

さて、今回のコンサートの二人の演奏は下の2枚のCDで聴けます。

「J. S. Bach Flute Sonatas」(Barthold Kuijken、Ewald Demeyere, ACCENT, ACC 22150)

BachFluteSonatasKuijkenAcc.jpg


「Solo pour la flute traversière」(Barthold Kuijken, ACCENT, ACC 20144)

SoloPourLaFluteTraversiereKuijken.jpg

どちらもベルギーの名門レーベル「ACCENT」から発売になっています。ここはクイケン氏のお膝元だけあって、優れた古楽の演奏ばかり集まっていて、どのCDもお勧めです。

BWV1007 無伴奏チェロ組曲 第1番ト短調

2008年01月23日

「バッハ:無伴奏チェロ組曲(全集)」(アンナー・ビルスマ、SEON, B18D-38001-02)

成立:1720年(最終稿)、ケーテン
基本資料:アンナ・マグダレーナ・バッハによる写筆譜(自筆譜は消失)
ブラウンシュヴァイ=ヴヴォルフェンビュッテツの音楽家、 G. H. L. シュヴァンベルクの求めに応じて作成
構成:
1. プレリュード(4/4)
2. アルマンド(4/4)
3. クーラント(3/4)
4. サラバンド(3/4)
5. メヌエットI(3/4)
6. メヌエットII(3/4)
7. ジーグ(6/8)

通奏低音として使われることが多かったチェロを、独奏楽器として取り上げた最初の作品。
印象的な16分音符の分散和音で続く曲から始まります。CMなどでよく使われているので、ご存知の方も多いはず。
アルマンドは、当時の有名な音楽評論家マッデソンが、「安らぎと秩序を楽しむ平和で、満ち足りた心情の映像」というアルマンドの見本のような曲。

ケーテン宮廷のヴィオラ・ダ・ガンバ、チェロ奏者であったクリスティアン・フェルディナント・アーベルを想定して作曲したものであるとされています。優れた演奏者がいてからこそ、無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータと同様、こうした素晴らしい音楽が産まれたとも言えますね。

古楽器を用いて録音された最初のアルバムであり、未だにこれを越える演奏はありませんね。ビルスマはこの後もう一度この曲の全曲録音をしていますが、やはり一枚目が好きです。カザルスの発見以来、たくさんのチェロ奏者の最終目標のようになっていて、たくさんの録音がありますが、その中でもビルスマの演奏を越えるものは感じられません。

演奏:アンナー・ビルスマ
使用楽器:バロック・チェロ(マッティオ・ゴッフリラー、ヴェネツィア、1669年)
録音:1979年4月、5月、ランツフート、エッヒング(バヴァリア)