「J. S. バッハ ミサ曲 ロ短調」(オランダ.コレギウム・ムジクム・バッハ合唱団、ラ・プティット・バンド、グスタフ・レオンハルト指揮、DHM、BVCD-7003-04)
成立:1748年8月〜1749年10月、ライプツィヒ
歌詞:ミサ通常文
編成:ソプラノ、ソプラノ、アルト、テノール、バス、合唱(5〜8部)、トランペット3、ティンパニ、ホルン、フラウト・トラヴェルソ2、オーボエ3、オーボエ・ダモーレ2、ファゴット2、弦合奏、通奏低音
基本資料:自筆総譜
楽曲構成:
第1部:ミサ(Missa、キリエ(Kyrie)、グローリア(Gloria))
キリエ(Kyrie)
第1曲:「主よ、憐れみ給え (Kyrie eleison)」(合唱、ロ短調、4/4)
第2曲:「キリストよ、憐れみ給え (Christe eleison)」(二重唱(ソプラノ2)、ニ長調、4/4)
第3曲:「主よ、憐れみ給え」(合唱、嬰へ短調、4/2)
グローリア(Gloria)
第4曲:「いと高き処にて神に栄光あらんことを(Gloria in excelsis Deo)」(合唱、ニ長調、3/8)
第5曲:「地には平和あれ(Et in terra pax)」(合唱、ニ長調、4/4)
第6曲:「我ら汝を讃え(Laudamus te)」(独唱(ソプラノ)、イ長調、4/4)
第7曲:「感謝し奉る(Gratias agimus tibi)」(合唱、ニ長調、4/2)
第8曲:「主なる神(Domine Deus)」(二重唱(ソプラノ・テノール)、ト長調、4/4)
第9曲:「世の罪を除き給うものよ(Qui tollis peccara mundi)」(合唱、ロ短調、3/4)
第10曲:「父の右に座したもうものよ(Qui sedes ad dexteram patris)」 (独唱(アルト)、ロ短調、6/8)
第11曲:「汝の望みなれば(Quoniam tu solus Sactus)」(独唱(バス)、ニ長調、6/8)
第12曲:「精霊とともに(Cum Sancto Spiritu)」(合唱、ニ長調、3/4)
第2部:ニケーア信教(Symbolum Nicenum)
第13曲:「我は信ず、唯一なる神を(Credo in unum Deum)」(合唱、イ長調、4/2)
第14曲:「全能の父を信ず(Patrem omnipotentem)」(合唱、ニ長調、2/2)
第15曲:「唯一の主イエス・キリストを信ず(Et in unum Dominum)」(二重唱(ソプラノ、アルト)、アンダンテ、ト長調、4/4)
第16曲:「精霊によりて(Et incarnatus)」(合唱、ロ短調、3/4)
第17曲:「十字架につけられ(Crucifixus)」(合唱、ホ短調、3/2)
第18曲:「三日目に蘇りたまい(Et resurrexit)」(合唱、ニ長調、3/4)
第19曲:「いのちの主なる精霊を信ず(Et in Spiritum Sanctum)」(独唱(バス)、イ長調、6/8)
第20曲:「唯一の洗礼を認む(Confiteor unum baptisma)」(5部合唱、嬰へ短調、2/2)
第21曲:「死者の蘇りを待ち望む(Et expecto rexurrectionem mortuorum)」(合唱、ヴィヴァーチェ・エ・アレグロ、ニ長調、2/2)
第3部:(サンクトゥス(Sanctus))
第22曲:「聖なるかな(Sanctus)」(合唱、ニ長調、4/4)
第23曲:「天と地は主の栄光に満てり(Pleni sunt coeli)」(ニ長調、3/8)
第4部:(オサンナ(Osanna)、ベネディクトゥス(Benedictus)、アニュス・デイ(Agnus Dei))
オサンナ(Osanna)
第24曲:「いと高きところにオサンナ(Osanna in excelsis)」(二重合唱、ニ長調、3/8)
ベネディクトゥス(Benedictus)
第25曲:「祝されたまえ(Benedictus)」(独唱(テノール)、ロ短調、3/4)
アニュス・デイ(Agnus Dei)
第26曲:「神の小羊(Agnus Dei)」(独唱(アルト)、ト短調、4/4)
第27曲:「我らに平和を与え給え(Dona nobis pacem)」(合唱、ニ長調、4/2)
バッハ唯一の通作ミサ曲。ルター派では、通作ミサ曲を礼拝に用いる習慣はなく、曲の細部にはカトリックの教会音楽を逸脱している部分があり、この作品がカトリック教会のために書かれたという裏付けはありません。一般的には、宗派を越えた普遍的宗教作品とみることができます(「バッハ事典」東京書籍)。
自筆総譜は4部にわけてまとめられています。
第1部:それを自体を「ミサ」と題され、「キリエ」と「グローリア」を含み、独立したミサ・プレヴィスとなっています。
第2部のニケーア信教は、「クレド」で1748年〜49年に編纂。オリジナル楽曲が比較的多く、総合ミサ曲の核心部分。第17曲:「十字架につけられ(Crucifixus)」は、1712年のカンタータBWV12の第2曲からの転用で、全曲の中で最も古いもの。第18曲:「三日目に蘇りたまい(Et resurrexit)」は、世俗カンタータBWV Anh. 9(1727年5月12日のアウグスト1世の誕生日祝賀用、音楽消失)第1曲の転用。
第3部「サンクトゥス」は、クリスマス第1日のルター派礼拝のために、1724年に作曲されたものの転用(全曲中で最も古い部分)
第4部が第3部に含まれないで、「オサンナ、ベネディクトゥス、アニュス・デイと、ドナ・ノビス・パーチェムところにオサンナ(Osanna in excelsis)」は、世俗カンタータBWV Anh. 11(1732年8月3日のアウグスト2世の誕生日祝賀用、音楽消失)から、BWV215を経て転用。第26曲:「神の小羊(Agnus Dei)」は、世俗カンタータBWV Anh. 196(1725年、結婚式用)から、BWV11を経て転用されています。
バッハの作品の中でも、特に「すごい」とされる作品。
古楽といわれる音楽のなかで、お前が一番すごいと思っている曲は何だ、と問われれば、これだ。ヨハン・セバスチャン・バッハという作曲家を特別愛しているわけではない私だが、「ミサ・ロ短調」だけは別格なのだ。バッハの声楽作品を聴いてみようとお考えで、かつ大曲に挑戦しようという勇気をお持ちの方、「マタイ受難曲」には手を出さず、「ミサ・ロ短調」をお選びください。
古楽CD100ガイド(国書刊行会)
と、金田敏也氏が書いているけれど、マタイ受難曲のくだりは別にして、とにかく本当に別格と言っても過言ではないでしょう。
宗教というのは,信者にとってはその宗教が唯一であり、自分の属する宗派というものがある意味絶対であるという感じを受けます。同じプロテスタントの中でもそうした感じを持つことさえあり(他宗派の批判にとどまらず、同じ教団の中でも他の教会の批判がされることもしばしば)、もちろんプロテスタントとカトリックとなれば話しはもっと複雑。北アイルランドのように、この両者が宗教という名を借りて、血なまぐさいことをやっています。こうしたことは世界各地で大なり小なりあることです、哀しいけれど。
ところがバッハはいとも簡単にそうしたことを越えてしまいます。わたくしはプロテスタントですが、この曲に「ミサ曲」というタイトルがついているから、聴く気になれないなどとは思いません。CD2枚に及ぶ大作ですが、じっくりと聴き入ってしまいます。まさに宗教、宗派を超越した「普遍的宗教作品」と言えるでしょう。バロックの宗教音楽は、モンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」に幕を開けたと言われますが、そのバロック宗教音楽の集大成がこの曲ではないかと思います。
これが特定の礼拝を目的としたものではなく、カトリックをもプロテスタントをも越えた汎宗教的態度によって綴られ、神にささげられた
「バッハ=魂のエヴァンゲリスト」(磯山雅著、東京書籍)
という考え方が一番しっくりとくると思います。
演奏は、わたくしがこの曲の演奏で一番好きなレオンハルトによるもの。
「別格の音楽には別格な演奏こそふさわしい」古楽CD100ガイド(国書刊行会)
と上述の金田氏絶賛ですが、わたくしもそう思います。声楽陣、演奏のラ・プティット・バンドを従えて、レオンハルト氏の研澄まされた指揮に感服します。
今日は会社の創立記念日で休みだったので、大きなスピーカーで久しぶりにじっくりと聴いてみました。やはりよいものはよいですね
演奏:
イザベル・プールナール、ギュメット・ロランス(ソプラノ)
ルネ・ヤーコプス(カウンター・テナー(アルト))
ジョン・エルウィス(テノール)
マックス・ファン・エグモント、ハリー・ファン・デル・カンプ(バス)
オランダ.コレギウム・ムジクム・バッハ合唱団
ラ・プティット・バンド
グスタフ・レオンハルト指揮
録音:1995年2月13−19日、Haarlem, Doopsgezinde Germeente Kerk