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ブリュッヘン、18世紀オーケストラによる《ミサ曲 ロ短調》を聴く

2010年04月03日

「J. S. バッハ ミサ曲ロ短調」(ブリュッヘン&18世紀オーケストラ、GLOSSA、GCD 921112)

フランス・ブリュッヘンと18世紀オーケストラによる「BWV232 ミサ曲 ロ短調」の新譜が届きましたので、早速聴いてみました。

今回の録音は2度目となります。旧譜はフィリップスで1989年3月に録音されたもの。これも名盤と言える演奏でしたが、今回の録音はさらにそれを上回っている感じを受けました。素晴らしい推進力と合唱、声楽陣の素晴らしさ。最近の録音ではOVPPによるものが増えていますが、カペラ・アムステルダムを従えての堂々の合唱です。
色んなアプローチの演奏を聴くことがクラシックを聴く醍醐味の一つだと思っていますが、最近多いOVPPに慣れてしまっているせいか(それをよく聴くようになっていることもあってか)、こうした分厚い迫力ある合唱を聴くと、新鮮に感じますね

ソプラノ1;ドロテー・ミールズ
ソプラノ2;ヨハネッテ・ゾマー
アルト;パトリック・ファン・ゲーテム
テノール;ヤン・コボウ
バス;ペーター・コーイ
カペラ・アムステルダム
18世紀オーケストラ
指揮;フランス・ブリュッヘン

録音:2009年3月
録音場所:ヴィトルト・ルトスワフスキ・ポーランド放送コンサート・スタジオ(ワルシャワ)

BWV233 ミサ曲 ヘ長調(キリエ、グローリア)

2009年12月24日

「J. S. Bach Missae Breves」(Cantus Cölln、Konrad Junghänel、harmonia mundi、HMC901939-40)

成立:1738/39年頃、ライプツィヒ
編成:ソプラノ、アルト、バス、合唱、ホルン2、オーボエ2、ファゴット、弦合奏、通奏低音
基本資料:総譜の写し
第1曲:キリエ(合唱、ホルン2、オーボエ2、ファゴット、弦合奏、通奏低音、ヘ長調、2/2)
第2曲:グローリア(合唱、ホルン2、オーボエ2、弦合奏、通奏低音、ヘ長調、6/8)
第3曲:ドミネ・デウス(バス独唱、弦合奏、通奏低音、ハ長調、3/8)
第4曲:クイ・トリス(ソプラノ独唱、オーボエ、通奏低音、アダージョ、ト短調、4/4)
第5曲:クオニアム(アルト独唱、独奏ヴァイオリン、通奏低音、ヴィヴァーチェ、ニ短調、3/4)
第6曲:クム・サンクト・スピリトゥ(合唱、ホルン2、オーボエ2、弦合奏、通奏低音、プレスト、ヘ長調、2/2)

おそらくヴァイマル時代に書かれた《キリエーキリスト、汝神の小羊よ ヘ長調》BWV233aを改訂したうえ、そこにグローリアを継ぎ足す形で生まれた作品。グローリアの各楽章も、すべて旧作の転用によっている。
バッハ事典(東京書籍)

ホルンがアクセントになっており、躍動感に満ちた1曲。キリエ、グロリアの合唱を聴いていると、その曲調から『大きな喜び』を感じます。第3曲目の『ドミネ・デウス』のバス独唱は、バスの名唱と弦楽器の柔らかい音色が魅力的。ニ短調の第5曲目は、アルトの独唱に寄り添うように演奏されるヴァイオリンが実に美しい。第6曲目で再びホルンを加えて合唱に戻りますが、天から歌声が降ってくるような感じがします。大きな喜びを感じて曲が終わります

演奏:カントゥス・ケルン、コンラート・ユングヘーネル(指揮)
録音:2006年1月、5月、St. Osdag, Neustadt - Mandelsloh

クイケン、ラ・プティット・バンドによるミサ曲ロ短調を聴く

2009年08月22日
KuijkenBminor.jpg

「JPHANN SEBASTIAN BACH h-Moll-Messe」(La Petite Bande Sigiswald Kuijen, Challenge Classics, CC72316)

少し前に入手したクイケンらによる「ミサ曲ロ短調 BWV232」を紹介したいと思います。チャレンジ・クラシックスでの大作録音の2作目となります(1作目は、モンテヴェルディの『聖母マリアの夕べの祈り』)。

この曲の概要については、以前レオンハルト盤で取り上げましたのでそちらを参照してください。

演奏の特徴ですが、大きく二つあります。

一つ目は、声楽パートが、OVPP(One Voice Per Part)を採用していること。これはクイケンだけの特徴ではなく、最近OVPPによる録音が非常に多く(恐らく新しい録音はほとんどがこちらを採用していると思います)、「特徴」というには語弊があるかもしれないですね。声楽陣の編成は下記の通りです;

第1部:ミサ(Missa、キリエ(Kyrie)、グローリア(Gloria));ソプラノ2、アルト、テノール、バス

第2部:ニケーア信教(Symbolum Nicenum);ソプラノ2、アルト、テノール、バス

第3部:(サンクトゥス(Sanctus));ソプラノ2、アルト2、テノール、バス

第4部:(オサンナ(Osanna)、ベネディクトゥス(Benedictus)、アニュス・デイ(Agnus Dei));ソプラノ2、アルト2、テノール2、バス2

となっています。第1部のソプラノは、コンチェルティストが、Gerlinde Sämannで、リピエニストが3人から成っていて、こちらはそれぞれの曲に応じて、担当者が変わります(Patrizia Hardt (第1、2、6曲), Elizabeth Hermans (第3、4、5、7、12曲), GerlindeGerlinde Sämann (第9曲))。

二つ目は、チェロの代わりに、「ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ」を用いているということです。クイケンはこの楽器の導入に積極的で、このブログでも紹介していますが、「無伴奏チェロ組曲 」(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ、シギスヴァルト・クイケン、ACCENT、ACC24196)や、同じACCENTに録音したヴィヴァルディの四季でも用いています。ただし、今回紹介している録音では、クイケンはヴァイオリンを担当していて、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラはMarian Minnenが弾いています。

この楽器が実際のところどうなのか?(かなり曖昧な表現ですが?)ということもありますが、個人的には、過去の様々な資料を基に、色んなアプローチをして、その演奏を聴く機会が増えることは大いに結構だと思っています。なおこの楽器については、私的CD評さんが、「ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラとバッハの無伴奏チェロ組曲 」で詳しく解説されていますので、是非ご一読下さい。

楽器の編成も小さく、声楽陣も上で述べた人数で行っており、かなり規模としては小さいですね。その分、全体の統一感が素晴らしく、演奏、声楽ともに優れていると思います

録音場所;San Lorenzo de El Escorial (Spain), Teatro Auditorio
録音年月日;2008/3/16-19

ミンコフスキーによるミサ曲ロ短調を聴く

2009年01月25日
MassInHmollMinkowski.jpg

「bach messe in h-moll」(les musiciens du louvre, grenobre, marc minkowski, naïve, V5145)

ふと気がついてみると、このブログもなんとか一年間やっていくことができました。そういうわけで昨日、自分へのご褒美にCDを買ってきました。今月発売になることを楽しみにしていた一枚ですが・・・

ミンコフスキらによる「 ミサ曲 ロ短調」。ここではすでに、レオンハルトらによる演奏を取り上げているので、曲の詳細については、そちらに譲ります。

こうした「おおがかりな曲」の録音に意欲的なミンコフスキですが、ようやくバッハに手を伸ばしてくれたか、という感じですね。この録音では、ソプラノ4人、アルト、バス、テノールがそれぞれ2人と、合計10人で歌っています。ソプラノはIとIIにそれぞれ2人ずつ割り当てているので、各声部に2人ずつ割り当てることになります。それでも歌の部分が薄っぺらくならないのは、さすがです。どちらかというと、各ソリストとリピエーノの力量が素晴らしいというべきでしょうね。また、演奏を努めるレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルも素晴らしいです。派手さはないものの、堅実な演奏だと思います。曲にあった演奏であると思います。

なお、このミンコフスキらによる演奏については、「一日一バッハ」さんの「ミンコフスキによる「ロ短調ミサ曲」」で詳しく解説されていますので、そちらを参照してください。

ソプラノパートに女性を用いているとはいえ、ミンコフスキの力量がフルに使われている素晴らしい録音です。
100ページに及ぶブックレットがついています(日本語訳はありません)

演奏;
ソプラノ;ルーシー・クロー、ジョアン・ラン、ユリア・レージネヴァ、ブランディーヌ・スタスキェヴィチ
アルト;ナタリー・シュトゥッツマン、テリー・ウェイ
テノール;コリン・バルザー、マークス・ブルチャー
バス;クリスティアン・インムラー、ルカ・ティットート
レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル(ルーヴル宮音楽隊)
マルク・ミンコフスキ(指揮)

録音年月日:2008年7月
録音場所:スペイン、サンティアゴ・デ・コンポステーラ、サン・ドミンゴス・デ・ボナバル教会

BWV243a マニフィカト 変ホ長調

2008年12月25日
LeipzigerWeihnachtskantatenHerreweghe.jpg

「J. S. Bach Leipziger Weihnachtskantaten」(Collegium Vocale Gent, Philippe Herreweghe, harmonia mundi FRANCE, HMC 901781. 82)

初演:1723年12月25日(クリスマス)、ライプツィヒ
歌詞;ルカによる福音書1、46−55。第12曲;三位一体の小栄誦。挿入曲用の種々の歌詞
編成;ソプラノ、ソプラノ、アルト、テノール、バス、合唱(ソプラノを分割した5部)、トランペット3、ティンパニ、リコーダー2、オーボエ2、弦合奏、通奏低音
基本資料;自筆総譜
楽曲構成;
第1曲;合唱(トランペット3、ティンパニ、リコーダー2、オーボエ2、弦合奏、通奏低音、変ホ長調、3/4)
第2曲;独唱(ソプラノ、弦合奏、通奏低音、変ホ長調、3/8)
挿入曲A;合唱;4部、変ホ長調、2/2)
第3曲;独唱(ソプラノ、オーボエ、通奏低音、ハ短調、4/4)
第4曲;合唱(オーボエ2、弦合奏、通奏低音、ト短調、4/4)
第5曲;独唱(バス、通奏低音、変ロ長調、4/4)
挿入曲B;四重唱(ソプラノ、ソプラノ、アルト、テノール、通奏低音、変ロ長調、3/4)
第6曲;二重唱(アルト、テノール、弦合奏、通奏低音、ヘ短調、12/8)
第7曲;合唱(トランペット3、ティンパニ、リコーダー2、オーボエ2、弦合奏、通奏低音、変イ長調ー変ホ長調、4/4)
挿入曲C;合唱(オーボエ2、弦合奏、通奏低音、変ホ長調、4/4)
第8曲;独唱(テノール、ヴァイオリン、ヴィオラ、通奏低音、ト短調、3/4)
第9曲;独唱(アルト、リコーダー2、通奏低音、ヘ長調、4/4)
挿入曲D;二重唱(ソプラノ、バス、通奏低音、ヘ長調、12/8)
第10曲;三重唱(ソプラノ、ソプラノ、アルト、トランペット、弦合奏、ハ短調、3/4;通奏低音なし)
第11曲;合唱(通奏低音、変ホ長調、2/2)
第12曲;合唱(トランペット3、ティンパニ、リコーダー2、オーボエ2、弦合奏、通奏低音、変ロ長調ー変ホ長調、4/4 - 3/4)

今日はクリスマスが初演とされている、「BWV243a マニフィカト 変ホ長調」を聴きます。以前紹介した「BWV243 マニフィカト ニ長調」の初稿です。

クリスマス用の4つの挿入曲(自筆譜では、演奏されるべき箇所を指定したうえで、末尾にまとめられている)を含む。それらはクリスマスの晩課で上演されるキリストの降誕劇の伝統に従うものと考えられる。ただし、初演時に実際舞台で演じられたかどうかは不明。改訂稿と比べるとやや荒削りの感はあるが、楽器の用法、大胆な和声法などの点で、捨てがたい魅力をもっている。なお、挿入曲Dは伝承不完全である。
バッハ事典(東京書籍)

歌詞はルカによる福音書1、46−55(マリアの賛歌)がもとになっています。

◆マリアの賛歌
1:46 そこで、マリアは言った。 1:47 「わたしの魂は主をあがめ、/わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます。 1:48 身分の低い、この主のはしためにも/目を留めてくださったからです。今から後、いつの世の人も/わたしを幸いな者と言うでしょう、 1:49 力ある方が、/わたしに偉大なことをなさいましたから。その御名は尊く、 1:50 その憐れみは代々に限りなく、/主を畏れる者に及びます。 1:51 主はその腕で力を振るい、/思い上がる者を打ち散らし、 1:52 権力ある者をその座から引き降ろし、/身分の低い者を高く上げ、 1:53 飢えた人を良い物で満たし、/富める者を空腹のまま追い返されます。 1:54 その僕イスラエルを受け入れて、/憐れみをお忘れになりません、 1:55 わたしたちの先祖におっしゃったとおり、/アブラハムとその子孫に対してとこしえに。」 1:56 マリアは、三か月ほどエリサベトのところに滞在してから、自分の家に帰った。

通常、礼拝では通常、待降節第3主日に使われます。

なお、「BWV243 マニフィカト ニ長調」へ改訂される際には、

・ニ長調へ移調
・リコーダーがトラヴェルソ
・一部ではオーボエからオーボエ・ダモーレへ変更
・4つの挿入曲が削除

されています。

上のバッハ事典(東京書籍)からの引用では、「改訂稿と比べるとやや荒削りの感はある」とありますが、実際に聴いてみると、そんなことは感じられません。マリアが聖霊によって、キリスト・イエスを宿したことを心からつつましい心で喜びに溢れて喜んでいることを見事に唱いあげています

演奏;
ソプラノ;Dorothee Blotzky-Mields, Carolyn Sampson
アルト;Ingeborg Danz
テノール;Mark Padmore
バス;Sebastian Noack

Collegium Vocale Gent
Philippe Herreweghe

BWV232 ミサ曲 ロ短調

2008年02月20日

「J. S. バッハ ミサ曲 ロ短調」(オランダ.コレギウム・ムジクム・バッハ合唱団、ラ・プティット・バンド、グスタフ・レオンハルト指揮、DHM、BVCD-7003-04)

成立:1748年8月〜1749年10月、ライプツィヒ
歌詞:ミサ通常文
編成:ソプラノ、ソプラノ、アルト、テノール、バス、合唱(5〜8部)、トランペット3、ティンパニ、ホルン、フラウト・トラヴェルソ2、オーボエ3、オーボエ・ダモーレ2、ファゴット2、弦合奏、通奏低音
基本資料:自筆総譜
楽曲構成:
第1部:ミサ(Missa、キリエ(Kyrie)、グローリア(Gloria))
キリエ(Kyrie)
第1曲:「主よ、憐れみ給え (Kyrie eleison)」(合唱、ロ短調、4/4)
第2曲:「キリストよ、憐れみ給え (Christe eleison)」(二重唱(ソプラノ2)、ニ長調、4/4)
第3曲:「主よ、憐れみ給え」(合唱、嬰へ短調、4/2)
グローリア(Gloria)
第4曲:「いと高き処にて神に栄光あらんことを(Gloria in excelsis Deo)」(合唱、ニ長調、3/8)
第5曲:「地には平和あれ(Et in terra pax)」(合唱、ニ長調、4/4)
第6曲:「我ら汝を讃え(Laudamus te)」(独唱(ソプラノ)、イ長調、4/4)
第7曲:「感謝し奉る(Gratias agimus tibi)」(合唱、ニ長調、4/2)
第8曲:「主なる神(Domine Deus)」(二重唱(ソプラノ・テノール)、ト長調、4/4)
第9曲:「世の罪を除き給うものよ(Qui tollis peccara mundi)」(合唱、ロ短調、3/4)
第10曲:「父の右に座したもうものよ(Qui sedes ad dexteram patris)」 (独唱(アルト)、ロ短調、6/8)
第11曲:「汝の望みなれば(Quoniam tu solus Sactus)」(独唱(バス)、ニ長調、6/8)
第12曲:「精霊とともに(Cum Sancto Spiritu)」(合唱、ニ長調、3/4)

第2部:ニケーア信教(Symbolum Nicenum)
第13曲:「我は信ず、唯一なる神を(Credo in unum Deum)」(合唱、イ長調、4/2)
第14曲:「全能の父を信ず(Patrem omnipotentem)」(合唱、ニ長調、2/2)
第15曲:「唯一の主イエス・キリストを信ず(Et in unum Dominum)」(二重唱(ソプラノ、アルト)、アンダンテ、ト長調、4/4)
第16曲:「精霊によりて(Et incarnatus)」(合唱、ロ短調、3/4)
第17曲:「十字架につけられ(Crucifixus)」(合唱、ホ短調、3/2)
第18曲:「三日目に蘇りたまい(Et resurrexit)」(合唱、ニ長調、3/4)
第19曲:「いのちの主なる精霊を信ず(Et in Spiritum Sanctum)」(独唱(バス)、イ長調、6/8)
第20曲:「唯一の洗礼を認む(Confiteor unum baptisma)」(5部合唱、嬰へ短調、2/2)
第21曲:「死者の蘇りを待ち望む(Et expecto rexurrectionem mortuorum)」(合唱、ヴィヴァーチェ・エ・アレグロ、ニ長調、2/2)

第3部:(サンクトゥス(Sanctus))
第22曲:「聖なるかな(Sanctus)」(合唱、ニ長調、4/4)
第23曲:「天と地は主の栄光に満てり(Pleni sunt coeli)」(ニ長調、3/8)

第4部:(オサンナ(Osanna)、ベネディクトゥス(Benedictus)、アニュス・デイ(Agnus Dei))
オサンナ(Osanna)
第24曲:「いと高きところにオサンナ(Osanna in excelsis)」(二重合唱、ニ長調、3/8)
ベネディクトゥス(Benedictus)
第25曲:「祝されたまえ(Benedictus)」(独唱(テノール)、ロ短調、3/4)
アニュス・デイ(Agnus Dei)
第26曲:「神の小羊(Agnus Dei)」(独唱(アルト)、ト短調、4/4)
第27曲:「我らに平和を与え給え(Dona nobis pacem)」(合唱、ニ長調、4/2)

バッハ唯一の通作ミサ曲。ルター派では、通作ミサ曲を礼拝に用いる習慣はなく、曲の細部にはカトリックの教会音楽を逸脱している部分があり、この作品がカトリック教会のために書かれたという裏付けはありません。一般的には、宗派を越えた普遍的宗教作品とみることができます(「バッハ事典」東京書籍)。

自筆総譜は4部にわけてまとめられています。
第1部:それを自体を「ミサ」と題され、「キリエ」と「グローリア」を含み、独立したミサ・プレヴィスとなっています。

第2部のニケーア信教は、「クレド」で1748年〜49年に編纂。オリジナル楽曲が比較的多く、総合ミサ曲の核心部分。第17曲:「十字架につけられ(Crucifixus)」は、1712年のカンタータBWV12の第2曲からの転用で、全曲の中で最も古いもの。第18曲:「三日目に蘇りたまい(Et resurrexit)」は、世俗カンタータBWV Anh. 9(1727年5月12日のアウグスト1世の誕生日祝賀用、音楽消失)第1曲の転用。

第3部「サンクトゥス」は、クリスマス第1日のルター派礼拝のために、1724年に作曲されたものの転用(全曲中で最も古い部分)

第4部が第3部に含まれないで、「オサンナ、ベネディクトゥス、アニュス・デイと、ドナ・ノビス・パーチェムところにオサンナ(Osanna in excelsis)」は、世俗カンタータBWV Anh. 11(1732年8月3日のアウグスト2世の誕生日祝賀用、音楽消失)から、BWV215を経て転用。第26曲:「神の小羊(Agnus Dei)」は、世俗カンタータBWV Anh. 196(1725年、結婚式用)から、BWV11を経て転用されています。

バッハの作品の中でも、特に「すごい」とされる作品。

古楽といわれる音楽のなかで、お前が一番すごいと思っている曲は何だ、と問われれば、これだ。ヨハン・セバスチャン・バッハという作曲家を特別愛しているわけではない私だが、「ミサ・ロ短調」だけは別格なのだ。バッハの声楽作品を聴いてみようとお考えで、かつ大曲に挑戦しようという勇気をお持ちの方、「マタイ受難曲」には手を出さず、「ミサ・ロ短調」をお選びください。
古楽CD100ガイド(国書刊行会)

と、金田敏也氏が書いているけれど、マタイ受難曲のくだりは別にして、とにかく本当に別格と言っても過言ではないでしょう。

宗教というのは,信者にとってはその宗教が唯一であり、自分の属する宗派というものがある意味絶対であるという感じを受けます。同じプロテスタントの中でもそうした感じを持つことさえあり(他宗派の批判にとどまらず、同じ教団の中でも他の教会の批判がされることもしばしば)、もちろんプロテスタントとカトリックとなれば話しはもっと複雑。北アイルランドのように、この両者が宗教という名を借りて、血なまぐさいことをやっています。こうしたことは世界各地で大なり小なりあることです、哀しいけれど。

ところがバッハはいとも簡単にそうしたことを越えてしまいます。わたくしはプロテスタントですが、この曲に「ミサ曲」というタイトルがついているから、聴く気になれないなどとは思いません。CD2枚に及ぶ大作ですが、じっくりと聴き入ってしまいます。まさに宗教、宗派を超越した「普遍的宗教作品」と言えるでしょう。バロックの宗教音楽は、モンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」に幕を開けたと言われますが、そのバロック宗教音楽の集大成がこの曲ではないかと思います。

これが特定の礼拝を目的としたものではなく、カトリックをもプロテスタントをも越えた汎宗教的態度によって綴られ、神にささげられた
「バッハ=魂のエヴァンゲリスト」(磯山雅著、東京書籍)

という考え方が一番しっくりとくると思います。

演奏は、わたくしがこの曲の演奏で一番好きなレオンハルトによるもの。

「別格の音楽には別格な演奏こそふさわしい」古楽CD100ガイド(国書刊行会)

と上述の金田氏絶賛ですが、わたくしもそう思います。声楽陣、演奏のラ・プティット・バンドを従えて、レオンハルト氏の研澄まされた指揮に感服します。


今日は会社の創立記念日で休みだったので、大きなスピーカーで久しぶりにじっくりと聴いてみました。やはりよいものはよいですね

演奏:
イザベル・プールナール、ギュメット・ロランス(ソプラノ)
ルネ・ヤーコプス(カウンター・テナー(アルト))
ジョン・エルウィス(テノール)
マックス・ファン・エグモント、ハリー・ファン・デル・カンプ(バス)
オランダ.コレギウム・ムジクム・バッハ合唱団
ラ・プティット・バンド
グスタフ・レオンハルト指揮
録音:1995年2月13−19日、Haarlem, Doopsgezinde Germeente Kerk

BWV234 ミサ曲 イ長調 (キリエ、グローリア)

2008年02月01日

「J. S. Bach Missae Breves」(Cantus Cölln、Konrad Junghänel、harmonia mundi、HMC901939-40)

成立:1738年頃、ライプツィヒ
編成:ソプラノ、アルト、バス、合唱、フラルト・トラヴェルソ2、弦合奏、通奏低音
基本資料:自筆総譜(ダルムシュタット、ヘッセン州立図書館)
第1曲:「キリエ」合唱(テンポ指定無し)-アダージョーヴィヴァーチェ(イ長調、3/4 - 4/4 - 3/8)
第2曲:「グローリア」合唱ヴィヴァーチェーアダージョ(イ長調、4/4 - 3/4- 4/4 - 3/4 - 4/4 - 3/4)BWV67の第6曲による
第3曲:「ドミネ・デウス」バス独唱、嬰ヘ短調、4/4
第4曲:「クイ・トリス」ソプラノ独唱、ロ短調、3/4(BWV179第5曲が原曲)
第5曲:「クオニアム」アルト独唱、ニ長調、6/8(BWV79第2曲の転用)
第6曲:「クム・サンクト・スピリトゥ」合唱、グラーヴェーヴィヴァーチェ(イ長調、4/4 - 12/8)音楽はBWV136の冒頭の合唱曲に基づく

バッハの「ミサ曲」とタイトルがつくのは、有名な「ミサ曲 ロ短調(BWV232)」とBWV233〜236の5曲だけです。その中からの一曲。

管楽器がフラウト・トラヴェルソのみという不思議に思える楽器編成。また、歌の方もテノールが出てきません。
「牧歌的曲想」と「バッハ=魂のエヴァンゲリスト」(磯山雅著、東京書籍)に書かれていますが、素朴な感じの曲です。演奏が大編成ではなく、管楽器がトラヴェルソのみなので、余計にそう感じてしまうのでしょうか?それでもやはり実に美しい・・・

演奏は大好きなカントゥス・ケルンが昨年出したアルバムから。声楽陣の大部分が入れ替わって、発売当時ある書評に、「新生カントゥス・ケルン」と書かれていました。しかし、相変わらず少数精鋭部隊であることには変りはなく、かちっとまとまった歌い方です。

このCDはミサ曲 ロ短調(BWV232)以外のミサ曲4つがすべて収録されています(ミサ曲 ロ短調(BWV232)は別に単独で録音しています)。

演奏:カントゥス・ケルン、コンラート・ユングヘーネル(指揮)
録音:2006年1月、5月、St. Osdag, Neustadt - Mandelsloh

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BWV243 マニフィカト ニ長調

2008年01月27日

「Magnificat - Cantata BWV 21」(ラ・プティット・バンド、シギスヴァルト・クイケン、Vergin、0946 363299 2 5)

初演:恐らく1733年7月2日(マリアのエリザベト訪問の祝日)、ライプツィヒ)
歌詞:ルカによる福音書1、46−55

第1曲:合唱(ニ長調、3/4)
第2曲:独唱(ソプラノ、ニ長調、3/8)
第3曲:独唱(ソプラノ、ロ短調、4/4)
第4曲:合唱(バス、変ヘ短調、4/4)
第5曲:独唱(バス、イ長調、4/4)
第6曲:二重唱(アルト・バス、ホ短調、12/8)
第7曲:合唱(ト長調ーニ長調、4/4)
第8曲:独唱(テノール、変ヘ短調、3/4)
第9曲:独唱(アルト、ホ長調、4/4)
第10曲:三重唱(ソプラノ、ソプラノ、アルト、ロ短調、3/4)
第11曲:合唱(ニ長調、2/2)
第12曲:合唱(イ長調ーニ長調、4/4-3/4)

マニフィカトは、ルカによる福音書の「マリアの賛歌」

◆マリアの賛歌 1:46 そこで、マリアは言った。 1:47 「わたしの魂は主をあがめ、/わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます。 1:48 身分の低い、この主のはしためにも/目を留めてくださったからです。今から後、いつの世の人も/わたしを幸いな者と言うでしょう、 1:49 力ある方が、/わたしに偉大なことをなさいましたから。その御名は尊く、 1:50 その憐れみは代々に限りなく、/主を畏れる者に及びます。 1:51 主はその腕で力を振るい、/思い上がる者を打ち散らし、 1:52 権力ある者をその座から引き降ろし、/身分の低い者を高く上げ、 1:53 飢えた人を良い物で満たし、/富める者を空腹のまま追い返されます。 1:54 その僕イスラエルを受け入れて、/憐れみをお忘れになりません、 1:55 わたしたちの先祖におっしゃったとおり、/アブラハムとその子孫に対してとこしえに。」 1:56 マリアは、三か月ほどエリサベトのところに滞在してから、自分の家に帰った。

をもとにしています。この部分は、礼拝では通常、待降節第3主日に使われますので、時期的には今ではないのですが、昨日聴いたのが「BWV1 輝く暁の明星のいと美わしきかな」で、基本テキストが、このマリアの讃歌の前の部分の受胎告知のところでしたので、その続きというわけです。受胎告知はルカによる福音書のみの記述です。

話しをもとに戻して、「マリアの賛歌」はマリアを崇拝、あがめたてまつる曲ではなく、上の聖書の引用部分を読んで頂ければわかっていただけると思いますが、マリアがキリスト・イエスを宿したことを喜びに溢れて歌っているということです。

演奏:
Greta de Reyghere : ソプラノ
Rene Jacobs : アルト
Christoph Pregardien : テノール
Peter Lika : バス
Nederlands Kamerkoor
ラ・プティット・バンド
指揮:シギスヴァルト・クイケン

BWV243aの改訂稿。243a (変ホ長調)から改訂の際に、ニ長調へ移調、リコーダーがトラヴェルソへ、一部ではオーボエからオーボエ・ダモーレへ変更されています。4つの挿入曲も削除されています。