- 2008年11月19日 19:59
- jazz
「Bitches Brew」(Miles Davis, SME RECORDS, SRCS-9714〜5)
「マイルスを聴け!」(双葉文庫)で有名な、ジャズ評論家の中山 康樹氏によれば、このマイルスのアルバムは、
「すべての音楽の頂点に君臨するアルバム、音楽」
らしい。とても心素直なわたくしは、もちろんこの意見に真っ向から反対する。すべての音楽の頂点に君臨するのは、偉大なるバッハの音楽である。だから、氏の意見は大きな間違いである。
さて、このアルバムであるが、たくさんのマイルスのアルバムの中で、決してとっつきやすいアルバムではない。むしろ、マイルス・デイヴィスというトランぺッターを知り、ジャズを聴こう、マイルスが有名だから彼のアルバムを買おう、とりあえず中山氏が絶賛していたから、これを最初に買うのがベストなチョイスだろう、
などと思って、まったくジャズを知らない人が、このアルバムを買ったら、二度とジャズを聴こうとは思わないだろう。ある程度ジャズに慣れ親しんでも、かなりハードルの高いところに存在しているアルバムだ。
コルトレーンが有名なので、なにか聴いてみたいのですが、どれがいいですか?と聞かれて、
「アセンション」や「至上の愛」
を勧めることはしないだろう、わたくしは。なぜなら、一般的に聴きやすいかというとそうではない。むしろ、一般に思われているジャズからは大きく離れたところにある、コルトレーンの極みの世界である。そうであれば、
「My Favorite Things」や「バラード」
を勧めると思う。そこからコルトレーンを知ってもらって、好きになれってもらえたら、そこからどんどんコルトレーンにはまっていっていただきたいと思う。
中山氏は、
とにかくだ、このさえあれば人生、やっていける
と書いているが、とんでもないことだ。わたくしにとっては、この一枚がなくても人生やっていける。むしろ無い方が幸せかもしれない。こんな小難しい音楽を聴きながら一生を過ごすと思うと、深い絶望感に襲われる。わたしくにとっては、聖書と礼拝さえあれば人生やっていけるのだ。こうしたものは個人的な価値観なのだ。わたくしは個人的には、マイルスの中で好きなのは、
「Man With The Horn」
と、
「We Want Miles」
の二枚だ。この二枚は特にマイルスのアルバムの中でも気に入っている。もちろん、彼は録音数は半端ではないので、わずか数枚でマイルスを語ることは難しいけれども・・・。
こうした、中山氏の発言のおかげで、このアルバムをまともに聴く気分になれないのである。バックのミュージシャンも素晴らしいし、文句のないアルバムである。しかし、評論家という人間が、本という媒体の中で、半ば脅迫に近い文言で、こうしたことを書けば、わたくしのように、心の汚れのまったくない人間は、それに素直に従う気分になれないのだ。運悪く、このアルバムを買ったのは、中山氏の一連の文章を読んだ後だった。これが入れ違っていたら、ここで書いたわたくしの文章は変っていたかもしれない。ひょっとしたら、
「さすが中山さん!あなたこそジャズというものがなんであるか理解している世界中で唯一の人です
なんて、心にもないことを書いていたかもしれない。
せっかくアルバムを紹介するために記事を書こうと思っていたのだが、彼の文章を読み返している内に、なんだか方向が変ってきてしまった。
彼はジャズは怖くないんですよ、と、一般のいわゆる「ジャズ入門書」と違う書き方、切り口でいくつかその手の入門書を書いている。しかし、結局のところ、何を言いたいのかわからないし、実際のところは、彼の信奉するマイルスさえ聞いていればいい、という結論に達するだけなのだ。たしかにマイルスはジャズの世界でも飛び抜けた存在だ。しかし、こうした1人の人間の排他的な発言のおかげで、聞く気分が失せてしまうもの真実なのである。評論家という人間の大きな功罪だと思う。そもそも自分で演奏すらしないくせに、人の作った作品を文章にするだけで金銭を得ているということ自体が気に食わないのだ。これはジャズに限ったことではない。クラシックでも、他の音楽でも同じことだ。HR/HMの世界で有名な雑誌「BURN」がどれだけ優秀なバンドをスポイルしてきたか。これはこの雑誌の編集者の好みだけで、良し悪しを決められたおかげなのだ。
一般の人間がたくさんのCDを月に買うことは、金銭的に不可能なのだ。そうした場合に、やはり雑誌や本の評価をあてにして買ってしまう。それによって、もっといい音源があっても、日の目を見ることがなくなってしまう。悪循環ではないか?
だらだらと長くなってきたので、本日の結論を書いておこう。
さらに中山氏いわく、
マイルスのこのアルバムを解からない奴はジャズを聴く資格はない
とのことだが、わたくしは、このアルバムを聞いてわからない。でもジャズを聴くことを辞めるつもりは毛頭ない。コルトレーンを聴いている方がずっといい。今ではマイルスを聴くと、中山氏の文章しか見えてこないし、マイルス以外にもたくさんの素晴らしいジャズはある。要は個人的な好みの問題だと思う。ここでわたくしがクラシックのピアノが大嫌いだとか、モーツァルトは評価に値する作曲家ではないと書いているが、まったく逆にピアノが大好きな人もいるし、モーツァルトこそが一番の作曲家だと思っている人もいるのだ。だからわたくしは、このブログ内で、個人的な意見として好き嫌いを述べるけれども、それを本などにしようなどとは思わない。そうすることは単なる個人の意見の押しつけに他ならないからである。音楽とは、このブログを始めるにあたって最初に書いたが、
「音を楽しむ」
もの以外のなにものでもない。そこには個人的な想い出、思い入れがあってもいい。でもそれを他人に押し付けるものではないと思う。
ええっと、マイルス・デイヴィス、あなたはこうしたくだらない外界のたわごとに関係なく、天国で多いに薬をやりながら、好きに音楽を文字通り楽しんでいることを願っております
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