- 2008年11月23日 12:30
- classical
「メンデルスゾーン&チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲」(ヤッシャ・ハイフェッツ、BMG、BVCC-37638)
ヴァイオリン奏者について書かれている本を読めば、必ず出てくるヴァイオリニストの1人。
「20世紀最大のヴァイオリニスト」
と評される一方で、
「無味乾燥」
とか、
「技巧的なだけ」
という批判もかなり多い。ある意味、好き嫌いがはっきりしているヴァイオリニストかもしれない。「ハイフェッツ嫌い」という用語すらあるくらいだから・・・
ハイフェッツについて、どういうヴァイオリニストか?と質問された時、こう答えることが多い。
「ヴァイオリンが人間の姿をして現れて、俺ってこれくらい弾けるから、こういう感じで弾いてくれよな」
と。
パガニーニがどのような演奏をしたのかは、現在録音が残っていないのでわからないが、少なくとも録音が残っているヴァイオリニストの中で、飛び抜けているのは、まぎれもなくハイフェッツだろう。ヴァイオリンの持っているポテンシャルをすべて魅せてくれるヴァイオリニストだと思う。
彼を単なる技巧的なだけだという人がいるが、その批判記事をたくさん読んだ後に、彼の演奏を聴いたのだが、まったくそういう感じを受けなかった。ちょうどヴァイオリンのレッスンに通うようになった頃だったので、彼がいかに「えげつないか」がよくわかった。
彼が生涯を「技巧」を身につけるためだけに生きていたとしたら、彼がアメリカでヴァイオリンを教えるようになってから、ヴァイオリン以外のパート、ピアノについても学ばせたという事実はどうなるのだろうか?彼はヴァイオリンを弾く人間は、ヴァイオリンだけを知っていればいいとは考えていなかったのだろう。一緒に演奏する楽器、例えばヴァイオリン・ソナタなら、ピアノが伴奏につくから、その伴奏についても学ばせたということは、音楽全体を見渡すことが重要であるということを知っていたし、その大切さを生徒に身につけさせることを当然と考えたのだろう。
このCDに納められた曲は、正直なところ好きなタイプの曲ではない。しかし、何度も聴くことができるのは、彼の演奏が「無味乾燥」で「単に技巧的」なだけではないからだと思う。
「20世紀最大のヴァイオリニスト」と言われるが、これについてはちょっとわたくしの考えは違う。「永遠に最大のヴァイオリニスト」だと思う。「当時にしてはすごかった」のではなく、「永遠にすごい」存在だと思う。
収録曲;
1)チャイコフスキー;ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op. 35
2)メンデルスゾーン;ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op. 64
3)チャイコフスキー;ゆううつなセレナード Op. 26
4)チャイコフスキー;ワルツ〜弦楽セレナード ハ長調 Op. 48より
ハイフェッツだが、彼は教鞭をとるようになってから、決して「プロフェッサー・ハイフェッツ」とは呼ばせなかった。生徒にすら「ミスター・ハイフェッツ」と呼ばせた。そんなウィットに富んだ人であったが、相当変わり者であったそうである。有名な話しなので、今更という感じもするが、
1)ヴァイオリンのレッスンの時は正装をすること
スーツ着用(女性はそれに準ずる服装、ミニスカートは決して駄目。高過ぎるヒールは駄目)。メガネは駄目(コンタクト)。脇香のする人間は、必ずデオドラントをすること。
2)パーティーは時間厳守
自宅でパーティーをする時は、必ず指定の時間までに到着していなくてはならなかった。例えば晩の7時とすると、7時になったら家の門を閉じてしまい、どれだけお偉方であろうが、遅れた人間は入れなかった
など色々ある。いってみれば、ただの「へんこな親父」なのだが、何か一本筋の通ったところがあったのだろう。
彼は技術に関しては、誰にもひけをとらなかった。その人がヴァイオリンの超絶技巧曲であるパガニーニのカプリースの全曲録音を行っていないのも不思議な話しだ。彼はあの曲集を「無味乾燥」だと思ったのだろうか?そうだとしたら、何か皮肉なものを感じる。彼も「無味乾燥」と散々叩かれたからだ。しかし、彼のずば抜けた演奏力をもってしたら、あの曲集はどうなるのか?というところはとても気になる。
数は少ないが、彼がカプリースを演奏した様子が残っている。
まずは24番;
ついで13番;
どちらもピアノが伴奏についているところが気になるけれど・・・
彼は私生活を語ることを頑に拒んだ人であった。その生涯を綴った本が
ウェシュラー・ベレッド,アーチャー、木邨 和彦(訳)
旺史社 (1989/12/20 出版)
だ。幼い頃の写真なども載っていて楽しい。楽しいと言えば、ルビンシュタインの自叙伝は読んでいて実に面白い。
ハイフェッツの演奏は、幸い入手しやすい。今回紹介したBMGが出している「RCA RED SEAL」というシリーズでたくさん出ているので、興味があれば聴いてみてください
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